「木の上の軍隊」敗戦後も山中に潜伏した兵士に日本人の愚かさを見る

公開日: 更新日:

全国公開中

 今年5月、自民党西田昌司がひめゆりの塔の展示について「歴史の書き換え」と発言し物議をかもした。当の西田は言葉を撤回することもなく、シレッとした顔で7月の参院選で再選された。こうしたことから大戦末期の沖縄戦が気になっていた。

 そんな折に公開されたのがこの「木の上の軍隊」だ。沖縄戦のあと2年に渡って山中に潜伏して生き延びた実在の兵士をモデルに、作家の井上ひさし(故人)が原案を手がけた物語。戦争の生き残りというと、横井庄一や小野田寛郎を思い浮かべるが、沖縄にも同じ境遇の兵士がいたのである。

 戦況が悪化の一途をたどる1945年。飛行場を建設中の沖縄県伊江島に米軍が侵攻。激しい攻防戦の末に島は壊滅的な状況に陥る。爆撃が続く中、沖縄出身の新兵・安慶名セイジュン(山田裕貴)は仲間が次々と殺され、宮崎県から派兵された少尉の山下一雄(堤真一)と合流。2人は敵に囲まれながらも、命からがら大きなガジュマルの樹上に身を潜めることに。米軍との戦力差を目の当たりにした山下は長期戦を覚悟し、援軍が来るまでその場で待機することを決断する。

 やがて戦争は日本の敗戦で終結するが、2人はそのことを知るすべもない。米軍の基地に捨てられた食料や物資を発見したことで生活は一変。それでも必死に「戦い」を続けるのだった……。

 監督は沖縄県出身の平一紘。全編が沖縄で撮影され、主舞台となる樹上生活は伊江島の公園に数カ月かけて植樹したカジュマルの上で撮影された。伊江島は沖縄本島から北西9キロの海上に浮かぶ面積23平方キロの小さな島である。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大の里、豊昇龍の両横綱も戦々恐々…「新怪物」加入で躍進止まらぬ伊勢ケ浜部屋の巨大戦力

  2. 2

    星野監督は中村武志さんを張り倒した直後、3ランを打った隣の俺にも鉄拳制裁…メチャクチャ痛かった

  3. 3

    「ブラタモリ」抜擢の桑子真帆アナ “金髪チャラ系”の大学時代

  4. 4

    松重豊は福岡の人気私立「西南学院」から明大文学部に 学費の問題で日大芸術学部は断念

  5. 5

    元幕内照強の“しょっぱい犯罪”に角界も呆れた…トラブル多数現役時代の「ヤンチャ」な素顔

  1. 6

    佐々木朗希いったい何様? ロッテ球団スタッフ3人引き抜きメジャー帯同の波紋

  2. 7

    小祝さくらは「加齢の影響」漏らしていた…ツアー6週連続欠場の深刻度

  3. 8

    84歳の五月みどりが最期のパートナーと過ごす“やすらぎの刻”…経営するギフトショップは閉店

  4. 9

    9.8決戦を目前に過熱する「石破おろし」情報戦…飛び交う総裁選前倒し「賛成」の票読み

  5. 10

    巨人・泉口友汰がセ首位打者に浮上…遊撃手“3番手扱い”からの進化を支える2人の師匠