「SENSEKI」逼塞の蘭学者が失明を乗り越えて挑む国防のライフワーク

公開日: 更新日:

9月13~19日 K's cinema新宿にて公開(10時~モーニングショー)

 この映画を見て「人間、年を取っても活躍の場はあるものだな」と感じ入った。というより、老境とは長年の経験や知識をさらに伸長させる実りの時期なのだと感心させられたのだ。

 主人公は幕末、下総国古河藩(現茨城県古河市)の家老だった鷹見泉石(1785~1858年)。優れた蘭学者である。物語は彼が藩のお家騒動に口を挟んで主君から遠ざけられ、国元で隠居の身になった1946年に始まる。

 蛮社の獄(1839年)など不穏な雰囲気が沈滞する中、泉石(たかお鷹)のもとには佐久間象山や勝海舟など、国の行く末を案じる者たちが参集。外国事情と海防政策に通じた泉石の知識に傾聴する。

 その一方で泉石はライフワークともいえる地図の作成に一人黙々と努める。力を入れたのが蝦夷地の地図だった。朝から晩まで地図を描きつつ、学問の研鑽を励む泉石を不幸が襲った。視力が薄れ、盲目同然となったのだ。

 家族の協力のもとに治療にあたる泉石。「目を使い過ぎてはならない」という医師の忠告にもかかわらず、地図作りに邁進する。失明の恐怖を経て嘉永2(1849)年に蝦夷地の地図は完成。その4年後、ペリーの艦隊が来航して国内は緊張する。さらにロシアのプチャーチンも押し寄せる。そのロシアとの交渉に泉石の作った地図は大きな価値を持った。このように荒々しい幕末のうねりの中、泉石は紆余曲折の後半生を送るのだった。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    山崎まさよし、新しい学校のリーダーズ…“公演ドタキャン”が続く背景に「世間の目」の変化

  2. 2

    「汽車を待つ君の横で時計を気にした駅」は一体どこなのか?

  3. 3

    沢口靖子「絶対零度」が月9ワースト目前の“戦犯”はフジテレビ? 二匹目のドジョウ狙うも大誤算

  4. 4

    遠山景織子の結婚で思い出される“息子の父”山本淳一の存在 アイドルに未練タラタラも、哀しすぎる現在地

  5. 5

    森下千里氏が「環境大臣政務官」に“スピード出世”! 今井絵理子氏、生稲晃子氏ら先輩タレント議員を脅かす議員内序列と評判

  1. 6

    大食いタレント高橋ちなりさん死去…元フードファイターが明かした壮絶な摂食障害告白ブログが話題

  2. 7

    “裸の王様”と化した三谷幸喜…フジテレビが社運を懸けたドラマが大コケ危機

  3. 8

    創価学会OB長井秀和氏が語る公明党 「政権離脱」のウラと学会芸能人チーム「芸術部」の今後

  4. 9

    星野源「ガッキーとの夜の幸せタイム」告白で注目される“デマ騒動”&体調不良説との「因果関係」

  5. 10

    山崎まさよし公演ドタキャンで猛批判 それでもまだ“沢田研二の域”には達していない

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ヤクルトのドラフトは12球団ワースト…「余裕のなさ」ゆえに冒険せず、好素材を逃した気がする

  2. 2

    「汽車を待つ君の横で時計を気にした駅」は一体どこなのか?

  3. 3

    ソフトバンクは「一番得をした」…佐々木麟太郎の“損失見込み”を上回る好選定

  4. 4

    コメ増産から2カ月で一転、高市内閣の新農相が減産へ180度方針転換…生産者は大混乱

  5. 5

    オリックスまさかのドラフト戦略 「凶作」の高校生総ざらいで"急がば回れ"

  1. 6

    ヤクルト2位 モイセエフ・ニキータ 《生きていくために日本に来ました》父が明かす壮絶半生

  2. 7

    オリ1位・麦谷祐介 暴力被害で高校転校も家族が支えた艱難辛苦 《もう無理》とSOSが来て…

  3. 8

    “代役”白石聖が窮地を救うか? 期待しかないNHK大河ドラマ『豊臣兄弟』に思わぬ落とし穴

  4. 9

    福山雅治は"フジ不適切会合参加"報道でも紅白で白組大トリの可能性も十分…出場を容認するNHKの思惑

  5. 10

    バスタオル一枚の星野監督は鬼の形相でダッシュ、そのまま俺は飛び蹴りを食らった