「老いと死をファクトで考えてみた」出口治朗著/扶桑社新書(選者:中川淳一郎)
出口さんがたどり着いた明るくて見事な「老い方」
「老いと死をファクトで考えてみた」出口治朗著/扶桑社新書
日本初のネット限定の生命保険会社・ライフネット生命を58歳の時に28歳年下の岩瀬大輔氏とともに立ち上げ、2人は年の差がある名コンビとメディアからは称賛された。そんな「大人」の代表格のような雰囲気をまとった出口氏が考える「老い」についての一冊だ。立命館アジア太平洋大学(APU)学長に70歳の時に就任し(現在は学校法人立命館顧問・APU名誉教授)、72歳の時に脳出血で倒れ、右半身不随となり78歳の現在は車いす生活の要介護3の状態である。
そんな出口氏が語る「老い」と「死」だが、これが意外なほどに明るい文脈になっているのである。出口氏は1週間に2~5冊の本を読み、会いたいと言ってくる人には極力会うような人生を送り、若者との対話は新たな知見をもたらすと考える人物である。
まさに「老害」の真逆のような存在だが、その豊富な知識をベースに「老い方の見事な人、もったいない人」を中国の歴史から3人ずつ挙げるなど、読者の知識欲をかき立ててくれる。そんな出口氏が「体系的な物事を学べるようになるのでは」という本を3冊挙げているが、そのうち一冊はデカルトの「方法序説」である。他の2冊は本書をご覧あれ。
さて、出口氏の教えとして重要なのが第4章「孤独でいい、孤立はするな」だ。孤独とは人間はつまるところ「一人」であることであり、孤独による一人の時間は「自分と付き合う時間」と定義。だからこそ、自分と一人でいて退屈しない人は老後を豊かに過ごせると説く。一方「孤立」は他者とのつながりが切れ、困った時に頼れる人がいない状況で、他人の視界に入らないことを意味する。全然違うものなのだ。
そして、定年退職後の人生についてこう警句を示す。
〈会社の人間関係は、大部分が、借り物です。(中略)あなた個人が結んだ縁というより、会社という仕組みが貸してくれていた縁です。証拠は、定年の日にわかります。名刺が消えると、あの賑やかな人間関係の何割かは、驚くほど静かに、消えていきます〉
これは特に仕事一筋で生きてきた男性に顕著に表れるのだという。
本書はこのように個人の「老い」「死」について論じるが、日本が再び復活するにはどうするか? 昔ながらの稼ぎ方でいいのか? AIとどう向き合っていくか、といった多面的な視点から個人と社会全体の繁栄について考察している。
老いと死を恐れたり忌みなるものと扱うのではなく、自然の摂理であると捉えるさまは「方法序説」にも通じる哲学領域にも踏み込んでいる。 ★★★


















