「歴史の条理に立つ勇気と構想」寺島実郎著/岩波書店(選者:佐高信)
時流に流されない著者が持つ歴史への視座
「歴史の条理に立つ勇気と構想」寺島実郎著
「俺たちはこんな日本にするために生きてきたのか」
著者の尊敬する先輩の経済人が、ある朝、入院先の病院から電話をしてきて、こう叫んだという。「オネダリとバラマキが繰り広げられる政治」に憤慨してである。
「対米関係の根源的見直し」が必要と考え、具体的提案をしてきた著者にとって、首相の高市早苗のやっていることは、その真反対でしかない。著者はトランプについて、ジョン・ダワーの次の評を引く。
「彼は世界で最も強力な国家を指導するにふさわしい知性も気質も備えていないように思える。彼は読書をしない。物事の詳細を知ろうとする忍耐力を全く持っていないし、物事の正確さや真実を尊重することもない。彼の注意力は薄弱で、英語の表現はとりわけ粗野である」
これはトランプにべったりの高市にもそのまま当てはまるのではないか。
先の衆院選での自民党の比例票の得票率は37%だが、有権者人口に占める得票率は20%に過ぎず、小選挙区制によって議席占有率は68%になった。このカラクリがなければ、自民党が“大勝”せず、高市政権が誕生することはなかった。今更ながら、政治改革という名の小選挙区制に賛成して、私たち反対する者を“守旧派”呼ばわりした田原総一朗や筑紫哲也を恨むばかりである。
学生時代に“右翼秩序派”のレッテルを貼られたという著者は少数派になることを恐れず、時流に流されない。
太平洋戦争を日本人は「アメリカへの敗戦」と受け止めたが、歴史を正視すれば「米国と中国の連携に敗れた」のだという指摘は特に重要だろう。「中国に敗れた」という意識がないから、「中国史における二度にわたる異民族支配の断層が見えていない」と著者は解説する。そして、ロンドン留学時の夏目漱石の日記(1901年3月15日)を引く。
「日本人を観て支那人と云われると厭がるは如何。支那人は日本人よりも遙かに名誉ある国民なり」「西洋人はややともすると御世辞に支那人は嫌だが日本人は好だと云う。之を聞き嬉しがるは世話になった隣の悪口を面白いと思って自分方が景気がよいと云う御世辞を有難がる軽薄な根性なり」
前首相の石破茂は著者の本を熟読し、その助言を求めた。石破と正反対の高市がトップであることにこの国の不幸がある。 ★★★



















