「ソフト対策である情報は受け手側が積極的に活用する必要があります」──「豪雨災害から身を守る」牛山素行氏
「豪雨災害から身を守る」牛山素行著
このところ、毎週のように全国で豪雨災害が起きている。「まさかここで、こんなことが起こるなんて……」と嘆きたくなるが、専門家目線で見ると「思いもかけない場所で被害が多発している」のではなく、土砂災害ならハザードマップ上で示された危険地域内で、浸水被害なら「低地」でほぼ起きており、災害は「起こりうるところで起こっている」らしい。
「人はどんな場所でどのように被災するのか。長年豪雨災害の現地調査をする中で、世間のイメージと実際の災害の間に微妙なズレが生じていることに気づきました。本書では、豪雨災害の実態を知っていただきたく、私たちの思い込みや誤解に焦点を当てて解説しています」
土砂災害の危険性を表すハザードマップで色が塗られていない区域なら安全だと思うのは、思い込みの典型例だ。危険な場所をすべて色塗りすると山間部は全部赤になってしまうため、人家のない場所は危険でも色塗りされないことになっているという。実際、水が出て平地の道が使えなくなった際に山道を抜けようとした車が土砂崩れに巻き込まれた例もある。
地震の時に頼りになる避難所でも、場所によっては豪雨時に危険な場所になるし、安全であっても道中が危険なケースもある。頑丈な建物に囲まれた都市部が必ずしも安全ともいえず、アスファルトで地形が見えなくなっている分、高低差に気づけず危険に近づいてしまうことすらある。
あらかじめ知っておくべき豪雨災害の実際
本書は、災害情報学を専門とする著者が、災害が起きた時にどうするかではなく、平時からあらかじめ知っておくべき豪雨災害の実際を6章構成で紹介したもの。データや写真などを駆使して、統計的にどんな場所でどのようなことが起きうるのか、多様な情報をどう受け止めたらいいのかについて冷静に提示する。
「堤防などのハード対策が行われた結果、昔に比べ中小規模の水害は起こらなくなったのですが、その分起こる時にはいきなり大きな水害がくる。けれど今は使える情報が増えています。ただハード対策と違って情報などのソフト対策は、そこにあるだけでは役に立たないのも確か。受け手側が積極的に活用する必要があるのです」
例えば豪雨で危険な場所をピンポイントで知るには気象庁ホームページ内の「キキクル」が使える。現象別に、「洪水」「浸水」「土砂」の3種類があり、地域の雨の強さがわかる雨雲レーダーとは違い、キキクルは災害の危険度が迫っている場所はどこかを細かな地域としてメッシュ状に捉える。
「土砂キキクル」の場合、1キロメートル四方ごとに細かく危険度が色分けされ、白(今後の情報等に留意)→黄(注意)→赤(警戒)→紫(危険)→黒(災害切迫)と段階的に示される。これはぜひ覚えておきたい。
「責任感があり背負っているものがある人ほど、何かしなきゃと思って災害時に動いてしまって危険に近づいてしまうことがあります。場所によっても事情が大きく異なるため、これさえすれば安全といった単純な対策はありませんが、唯一共通して言えるのは、豪雨や洪水に立ち入らない、接触しないようにすること。水や土砂の前で私たちはとても脆い存在です。自分はもちろん、部下や家族が災害に巻きこまれない判断をするために、本書を参考にしていただけたら」
(晶文社 1870円)
▽牛山素行(うしやま・もとゆき)1968年、長野県生まれ。信州大学農学部卒。静岡大学防災総合センター教授、東京大学大学院情報学環総合防災情報研究センター客員教授。日本自然災害学会会長。著書に「豪雨の災害情報学増補版」「防災に役立つ地域の調べ方講座」などがある。



















