修羅にうたう
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(54)戦は終わらぬでしょうか
「一休さんがこうして遊里におられると、無体をする者が減るのです。一休さんは、我らのように売られて来た女や、森女さんのような弱き者の中にこそ、仏はいるとおっしゃる」 そういうものか、半ば首肯し、…
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(53)地獄太夫と申します
一休の声は、異様な風体とは異なり、何とも穏やかで落ち着いている。宗長はふと肩の力が抜ける気がした。 「宗祇様は今、美濃におりまして、間もなく京に戻られると」 「ほう……あいつも忙しない」…
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(52)美女の傍らに一休宗純
遊里の野暮の末、一人が腰の刀を抜き放つと人垣が割れた。 こんな町中の人込みで刀を揮えば、少なからず人死にが出る。宗長は思わず拳を握り、硬直した次の瞬間、刀を抜いた男の頭上に、水が降り注いだ。…
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(51)義忠を失った夜の景色が蘇る
義忠を失ったことも、宗祇には文で伝えていた。しかし今は歌を詠む気力もない。それでもまずは会ってみようと思っていた。しかし生憎と宗祇は都にはいなかった。 「それならば、大徳寺で参禅でもしたら如何…
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(50)静かな月の光が降り注ぐ
〈都にて、宗祇と一休〉 都で人脈を広げ、いずれは今川の役に立つ。 それが亡き義忠との約束であった。しかし、都に上がった当初は、最早、何をする気も起きなかった。 「どれほど強い者で…
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(49)宗長の横顔に深い後悔
〈祖父との縁〉 「古い話だ」 語り終えた宗長は、傍らにいる弥太郎を見やり、ふうっと深いため息をつく。 「勝ち戦で、武勇の大将であった。しかしあの瞬間、いとも容易く命は奪われ、我らは…
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(48)何と呆気なく命を落とすとは
宗長は泰煕を見やる。 「……どうしましょう」 「儂はまだ戦える故」 屈強で大柄な泰煕は、顔に浴びた返り血を拭い、刀を手に握り、鼻息も荒い。そして横たわる義忠の姿を覗き見る。 …
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(47)義忠の身を担いで歩きだす
「御館様」 宗長の絶叫は、周りにいた武将たちの耳にも届いたらしく、彼らも戦いを止め、義忠を救うべく集まり始めた。 宗長もようやく雑兵を蹴散らして、倒れている義忠ににじり寄る。 「…
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(46)馬上の義忠は正に鬼神の如く
それにしても、こうして戦の帰途に、今度は政に頭を切り替え、未だ幼き娘の嫁ぎ先を考えているとは。義忠の考えの深さと広さに、改めて驚かされる。そして同時に、これでもう戦が終わるのだと、安堵する思いもあっ…
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(45)予て京へ修行の旅に出たい
一行はゆっくりと山道を進んでいく。 「何故、小夜の中山ではなく、塩買坂なのですか」 遠江から駿府の今川館に向かう最短の道は、小夜の中山と呼ばれる道である。しかし今、進んでいるのは、信濃…
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(44)奥にある林の中から数多の目
敵味方の判別はつかぬが、骸はそこここに転がっていた。 ふと見やると、その奥にある林の中から、数多の目がこちらに向けられているのに気付いた。それは、甲冑など身に着けず、粗末な着物で泥に塗れた顔…
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(43)しかと、この武勇を記せよ
〈勝ち戦の結末〉 文明八年の二月。春が来たとはいえ、まだ風は肌寒い夜である。二十九歳の宗長は、墨染姿で焚火に当たっていた。 「勝ち戦の帰り道とは、かくも気分の良いものか」 焚火の…
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(42)さながら禅寺の修行のよう
「御坊があの者を唆したと、佐助は言っていましたが」 宗長は、やれやれ、と肩を竦める。 「あの孫十郎という野武士は、虚勢を張っていないと耐えられなかったのだろう。だが放って置けば、城内が不…
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(41)さながら禅寺の修行のよう
宗長に導かれて出向いた二の丸には、入り口近くに、頑強な体躯の野武士たちがおり、その奥には農夫上がりと思しき面々がいる。そして最奥には、怪我を負って寝ている者がごろごろと転がっていた。 「農夫上…
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(40)この者たちをどうしろと
〈籠城を生きる〉 城郭の裏手にある納屋の前。弥太郎の目の前には、女たちがずらりと十人余り並んでいた。髪を結い上げて桂包でまとめており、くすんだ木綿の小袖を身に纏っている。その傍らには目つきの剣…
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(39)あの男は怯えていた
うっかり宗長に心を許していただけに、佐助は裏切られたような心地がした。そして、己が孫十郎のことを話したばかりに……と思うと、ずしりと業を背負ったようで、青ざめる。 その顔を見た宗長は、佐助の…
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(38)孫十郎の選んだ道じゃ
とはいえ、孫十郎のことを話したのも、引き合わせたのも佐助だ。そう言おうとするのを遮り、宗長は更に続けた。 「死んだ四郎殿のことも。そなたは傍らにいた故、さぞや心を痛めたであろう。されど、自ら命…
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(37)ここだけの話ではあるが
孫十郎の言葉には、華やぎと希望があるように思う。だが、それを聞く宗長は、焚火の周りを囲む、疲れ果てた雑兵たちを沈痛な面持ちで眺めた。 「これで勝てるとお思いか」 「おう、大井の国衆がどれ…
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(36)籠城とは何とも不甲斐ない
突如として現れた宗長に褒められた孫十郎は、気を良くして胸を張り、口ひげを撫でつつにやりと笑う。 「さよう。俺が孫十郎だ。御坊は何者かな」 「ああ、儂は昨日、駿府より遣いで参ったのだ。総大…
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(35)野武士たちの目が爛々と
夜が近づいて来ると、城郭の中の者たちは、居場所を求めて彷徨い始める。 火を焚くにも木も少なく、松脂も僅か。すると力ずくで奪い合うことになる。結果、剛腕な者の側に焚火があり、従う者はその周りを…
