R&B人気に大きく寄与した45回転のドーナッツ盤|「アメリカン・ポップス大全」亀渕昭信著
「アメリカン・ポップス大全」亀渕昭信著
「ハガキぶん投げ大作戦」──60代以上の人なら知っている人も多いのではないか。ラジオの深夜放送が全盛の頃、人気番組「オールナイトニッポン」のDJ、カメちゃんこと亀渕昭信がリスナーから寄せられたハガキを投げて、一番遠くへ飛んだハガキの書き手に1万円をプレゼントするというもの。「カメ&アンコー」としてレコードを出すなど当時随一の人気DJだったカメちゃんが、その後ニッポン放送の社長になるとはビックリ!
ともあれ、その人気の要因の一つはやたらと洋楽に詳しかったこと。本書はカメちゃんが子供の頃から大好きだったアメリカン・ポップスの1950年代からビートルズが登場する60年代初頭までの歩みを自身の体験を交えてつづったもの。この時代に生まれたのがロックンロールだ。つまりはビートルズ以前のロックンロール史ともいえる。ロックンロールはR&Bなど黒人たちの音楽をベースとして生まれたが、当時は「レースミュージック」として差別的な扱いを受けていた。それを一転させたのが、エルビス・プレスリーだ。白人が黒人の音楽を歌うことでR&Bが一気に広まる。それに大きく寄与したのが45回転のドーナッツ盤だ。本書には従来のSP盤に代わって登場したLPとEP(ドーナッツ盤)の激しい市場競争の模様も描かれているが、LPに比べて安価なEPが貧しい若者にロックンロールを広めた一因となったのだ。
その新しい音楽の波は日本にも及び、亀渕少年も銀座の洋書屋イエナでアメリカの音楽誌を入手して情報を得ていたというのだから、その洋楽好きは筋金入りだ。アメリカの音楽業界のシステムや全米を揺るがした業界の汚職事件などにも詳しく触れており、これまで断片的にしか知ることのなかったアメリカン・ポップス史が大きな流れとして描かれている。大滝詠一との対談も、洋楽ファンにはうれしいおまけ。 <狸>
(白水社 2640円)


















