「赤ずきんの運命、シンデレラの謎」斧原孝守著│さまざまなバリエーションがある赤ずきんの結末
「赤ずきんの運命、シンデレラの謎」斧原孝守著
「赤ずきん」といえば「グリム童話集」が有名だが、その結末は猟師に助けられた赤ずきんが狼の腹に石を詰めて退治に成功するというもの。しかし同じヨーロッパでも、狼に食べられて終わるものや、計略を図って逃げ出すものなどさまざまなバリエーションがある。では「赤ずきん」は本来どのような結末をもつ物語だったのだろうか。本書は「赤ずきん」「シンデレラ」「長靴をはいた猫」の3つの昔話を素材に、ヨーロッパのみならず東アジアまで含む広い世界で昔話がどのように伝えられ変化していったのかをひもといている。
中国で最もよく知られた昔話のひとつに「虎婆さん」という話がある。女が道の途中で虎に化けた婆さんに食われる。続いて女の4人の娘を食おうと家に向かうが、2人の娘はひもを使って木の上へ逃げて、婆さんを木の上から池に落として溺れさせる。日本の「天道さんの金の鎖」は3人姉妹が狐の化け物に襲われ妹2人は食われてしまうが、姉は木の上に逃げて天から降りてきた鉄の鎖と箱に乗って難を逃れる。実は「赤ずきん」にも「ひも=鎖」のモチーフを持つものがあり、3つの話に共通している。
「シンデレラ」も同様で、中国には世界最古の「シンデレラ」という話が伝えられており、日本にも「米福粟福」という昔話が同じ内容を持っている。ただし各地の類話に登場する、王子がシンデレラを特定する「シュー・テスト」が、「米福粟福」にはない。日本では足の形に合わせた靴を履く習慣がなかったためと思われる。
猫が悪知恵をめぐらせて若者を栄達に導くという「長靴をはいた猫」もユーラシア世界に広く伝わるもので、猫はウサギや狐などに変化している。この話はなぜか大陸の東端の中国、朝鮮、日本にはほとんど伝わっていないのだが、話の源流には「花咲か爺」と通じるものがある、など昔話の豊穣な奥深さを教えてくれる。 〈狸〉
(三弥井書店 3080円)



















