マリー・アントワネットは洞窟から「王妃の村里」へ│「驚異の隠し部屋世界各地の内緒の部屋・秘密の抜け道・迷宮・秘宝」ステファン・バックマンほか著 片山美佳子訳
「驚異の隠し部屋世界各地の内緒の部屋・秘密の抜け道・迷宮・秘宝」ステファン・バックマンほか著 片山美佳子訳
ベルサイユ宮殿のマリー・アントワネットの寝室には隠し扉があり、そこを入ると他の人が入れない極めてプライベートな空間が設けられていた。また、宮殿近くに「王妃の村里」という自分専用の村里をつくり、秘密の洞窟を通ってそこへ通っていたという。さまざまな噂にさらされて疲弊していたアントワネットにとって、そうした隠れた空間こそ「私が、私でいられる場所」だったのだ。本書は、そうした隠し部屋をはじめ、地下に造られた宮殿や迷宮など世界各地にある世間から隠された場所を訪れ、「その扉を開き、ベールに覆われて忘れられた歴史を掘り下げて」いったもの。
「穴掘り公爵」と呼ばれたイングランドのポートランド公爵は、地下に広大な宮殿を建設した。母屋から地下宮殿につながる通路の長さは500メートル、2台の馬車が通れるほど広かった。美術品や書物でいっぱいの豪華絢爛な部屋の他、舞踏室やビリヤード場も設けられ、広場恐怖症の公爵はそこでひとりで楽しんだという。メキシコのサンタモニカ修道院の修道女たちは政府からの圧政から逃れるために、70年以上にわたってトンネルを張り巡らした地下の修道院を隠れ家としていた。
その他、ロシアのエカテリーナ宮殿にあった「琥珀の間」、カリフォルニア州サンノゼの幽霊屋敷「ウィンチェスター・ミステリー・ハウス」、禁酒法時代のスピーク・イージー(もぐり酒場)、大英博物館の「秘密の陳列室」など、17の隠し場所が紹介されている。コラムも充実していて、「世界一不道徳な男」の異名を持つアレイスター・クロウリーが冥界の王を召喚するために購入したスコットランドのネス湖の近くにある屋敷を、あのレッド・ツェッペリンのジミー・ペイジが所有していたという話など、隠し部屋にまつわる不思議な世界へいざなってくれる。これらは、隠したい人間と秘密を暴きたい人間との熾烈な闘いの物語ともいえるかもしれない。 <狸>
(日経ナショナルジオグラフィック 3850円)



















