「かたちと進化の謎」生形貴男著|数理が進化研究全体に大きく寄与
「かたちと進化の謎」生形貴男著
本書冒頭に、さまざまなかたちをした13種の貝殻の写真が掲載されている。横に平べったいものから、タケノコの穂先のようなもの、四方にいくつもの膨らみのある、これと形容できないものまで実に多様なかたちが並んでいる。この写真を見せて著者は問う。この一見すると似ているものがなさそうな貝殻に共通するものは? 答えは「どれも殻がらせん状に巻いている」こと。
そう言われても、このどこがらせん? と首をかしげるものもある。思えば、顔が似ている似ていないにしても、主観が入り込んで人によって感覚は大きく異なる。主観ではなく、かたちの共通性と多様性を分析するための強力なツールが「数理」。本書は古生物学者の著者が専門とする貝類を中心に、化石や生物のかたちに「数理のまなざし」を向けたときにどのような風景が見えてくるのかを紹介したもの。
例えば、怪獣のゴジラは身長50メートル、体重2万トンとされている。ところがヒグマと比べると、比重が一桁大きい。つまり全身が鉛でできているようなものだ。それをヒグマの比重に合わせると現在知っているゴジラとは程遠いプロポーションになる。要は、「サイズ」「かたち」「機能」の3つが関係しながら、同じ個体でも成長するにつれてかたちを変えていき、大きくは種全体の進化の方向にも関係していく。
本書ではそうした古生物学で扱うさまざまな現象を、かたちの数理で読み解くための具体的な方法が紹介されている。その内容は、理数系が苦手な者にはいささかハードルが高いが、世界中の学者が、より精度が高く、普遍的な方法を目指して探究を続けていることを知って目をみはらせる。幾何学的形態測定学、輪郭形態測定学、境界形態測定学、理論形態学……耳慣れない学問だが、こうした分野での地道な研究が、古生物学のみならず進化研究全体に大きく寄与しているのだということがよく理解できる。 〈狸〉
(講談社 1320円)



















