心臓病
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医療者は軽症でも重症でも患者に「希望」を提供することが大切
自ら死を願う筋萎縮性側索硬化症(ALS)の女性患者(当時51)の望みを、SNSで知り合った2人の医師が薬物を投与して殺害したとされる嘱託殺人について思うところを前回お話ししました。法律上も倫理上も認められていない医療行為を個人的な考...
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認められていない考え方をごり押しするルール違反は許されない
先月26日、昨年11月に起こった、いわゆる「ALS患者嘱託殺人事件」で起訴された医師2人について、裁判の前に事件の争点を整理する手続きが始まりました。 意識がはっきりあるまま筋力だけが徐々に失われていく難病の筋萎縮性側索硬化...
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患者と医療者それぞれ考えているゴールがずれると問題が起こる
「JCI」という国際的な病院機能評価機構があります。世界基準で患者の安全性が確保されているか、適正な高度医療が提供されているかを詳細な項目で厳格に評価する非営利団体です。 そのJCIの評価項目で、医療者側がもっとも患者さんに与...
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胸やけで考えられる病気は? 心臓病が隠れているケースも
胸やけは食事の後などに、胸が焼けるような感じや痛み、違和感がある症状です。考えられる病気は一般的に「胃食道逆流症」です。 これは、胃酸が食道に逆流することによって、みぞおちのあたりが焼けるように感じる胸やけを起こしたり、酸っ...
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先進的な医療には「ヒト・モノ・カネ」が余計に必要になる
医療の進歩によって、心臓疾患の治療もどんどん進歩しています。たとえば、循環器内科が実施する「TAVI」(経カテーテル大動脈弁留置術)という血管内治療がその代表といえるでしょう。近年、高齢者で急増する大動脈弁狭窄症の患者さんに対し、カ...
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EBM=根拠に基づいた医療は医療安全とセットになっている
「医療安全」=「患者さんを守る」という理念が組織的にも確立されたのは、前回お話ししたように30年ほど前からで、実は新しい考え方といえるでしょう。そんな医療安全を実現させるうえで、重要なのが「EBM」という概念です。「Evidence ...
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専門誌で研究報告 週1回のチョコレートでも心臓病に効く?
ココアやチョコレートに含まれるカカオ由来のポリフェノールと呼ばれる植物由来物質に、体の老化を防ぎ、生活習慣病を予防する効果があることは多くの研究によりほぼ確実と考えられています。特に研究されているのは、認知症に対する予防効果で、一定...
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手術の延期は患者の安全と安心を守るために判断される
先日、予定していた「心臓弁膜症」の手術が延期になりました。患者さんの皮膚にアレルギーによる発疹が認められたからです。 何らかのアレルギーがある患者さんを手術する際は、通常の場合よりも細心の注意が必要になります。術中にアレルギ...
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新型コロナの影響で日本の医療体制の再整備が進むだろう
新型コロナウイルス感染症(COVID―19)が再び広がっています。予防ワクチンや急性期治療薬が完成し、季節性インフルエンザと同じような感染症という扱いになるまでは、まだ時間がかかりそうです。 感染拡大と緊急事態宣言が発令され...
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「病院食」制約ある中で1食につき40種類以上が作られている
入院している患者さんに病院が提供する食事=病院食は、「治療食」とも呼ばれます。文字通り治療の一環であるうえ、入院中の患者さんにとって数少ない楽しみのひとつともいえる大切なものです。 そんな病院食が、病院にとって少なくない負担...
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米で論文報告 バランスの良い食習慣は心臓病を2割予防する
食習慣と健康についてインターネットで調べてみると、その信頼性はともかく膨大な量の情報が検索されてきます。しかし、食事の内容と健康状態の関連性を長期追跡した研究データは限定的で、明確なことはあまりよく分かっていないのです。そんな中、食...
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外科医に欠かせない手術前の「手洗い」が大きく変わってきた
忙しい外科医の手はゴツゴツしている――。皆さん意外に思うかもしれません。 手術に臨む前、外科医は必ず入念な「手洗い」を行います。手術を数多く行っている経験豊富な外科医は、それだけ手を洗う機会も多くなり、手洗いの回数が多いと皮...
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心臓にトラブルを抱えている人は肺炎にかかり重症化しやすい
「肺炎」がこれまで以上に注視されています。2011年から16年まで日本人の死亡原因の3位だった病気ですが、新型コロナウイルスによる重症肺炎で亡くなる人が相次いでいることでさらにクローズアップされている状況です。 そもそも肺と心...
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心臓の手術を受けた後は「不整脈」に細心の注意を払う
厚労省の調査によると、日本では高血圧を除いた心臓疾患の患者数が173万人を超えていて、年間約6万人が心臓手術を受けています。高齢化がますます進み、心臓にトラブルを抱える人がそれだけ増えているのです。今後はますます心臓手術を受ける人が...
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便秘を招く生活習慣が突然死するリスクをアップさせる
人間の腸内に100兆個ほど存在している腸内細菌が心臓疾患の発症に関係していることを前回お話ししました。腸内環境が悪化して腸内細菌のバランスが崩れると、動脈硬化を促進してしまうのです。 食生活のアンバランスさが続くと、高血糖、...
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患者を守るためにも医師の「働き方改革」は重要な課題
新型コロナウイルス感染症(COVID―19)の騒動が続く中、「テレワーク」という言葉をよく耳にするようになりました。情報通信技術を利用した場所や時間に制約されない働き方のことです。新型コロナウイルスの感染拡大を避けるため、出社せずに...
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花粉症対策を万全にして新型コロナと心臓疾患から身を守る
新型コロナウイルス感染症(COVID―19)の騒動は過熱する一方です。本格的にシーズンが到来した「花粉症」に悩んでいる人にとっては、さらに悩ましい日々が続いているのではないでしょうか。マスクが品薄でなかなか手に入らないうえ、うかつに...
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心臓疾患を抱える人は新型コロナウイルスに細心の注意を
中国・武漢から発生した「新型コロナウイルス」(COVID―19)の感染が拡大しています。2月18日時点では、日本国内で確認された感染者は45人(クルーズ船の乗客乗員、武漢からのチャーター便帰国者を除く)で、13日には感染した80代の...
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心臓の「弁」に対する治療法には大きな2つの流れがある
人工心肺を使わずに心臓を動かしたまま傷んだ僧帽弁の修復を行う新しい手術法について前回お話ししました。「ネオコルダ」と呼ばれる弁形成術で、大阪大の心臓血管外科グループが国内で初めて成功させた手術です。 心臓の拍動を止めないうえ...
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心臓を止めない僧帽弁閉鎖不全症の弁形成術は革新的といえる
昨年12月、大阪大学の心臓血管外科の研究グループが、「僧帽弁閉鎖不全症」に対する画期的な手術法を国内で初めて成功させました。心臓を動かしたまま人工心肺を使わずに傷んだ僧帽弁を修復する弁形成術で、「ネオコルダ」と呼ばれる手術です。 ...
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「脳卒中・循環器病対策基本法」では生活習慣の改善を重視
昨年12月1日、「脳卒中・循環器病対策基本法」(健康寿命の延伸等を図るための脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法)が施行されました。これを受け、厚労省は先ごろ「第1期循環器病対策推進基本計画を今夏にも策定する」と明...
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冬は血圧が下がりすぎて病院で倒れる高齢者が増える
寒い季節になると、病院で急増するトラブルがあります。午前11時くらいから午後1時ごろまでの間に、院内で突然倒れる高齢者が1週間に2~3人のペースで続出するのです。患者さんに緊急事態が起こったとき、ほかの患者さんにはわからないように隠...
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睡眠障害からくる不整脈は原因から対処してくれる施設を選ぶ
女性に多く見られる心臓疾患として、前回は「大動脈弁狭窄症」を取り上げました。これは、「退行変性」と呼ばれる加齢に伴って生じる変化の影響で引き起こされるケースが多い疾患といえます。 女性に多い心臓疾患には、そうしたパターンでは...
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ヒートショック対策3つ 湯船に入る際の声にも意外な効果が
冬場のお風呂はお父さんにとって天敵。厚労省によると、入浴中の心肺停止は年間1万9000件(13年度)。12月から2月にかけ5割が集中しており、ヒートショックが大きな原因とみられる。トイレや玄関先でのヒートショックを加えれば、おそらく...
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5人に1人が心不全発症する時代…夜中の頻繁なトイレに注意
過去10年間の医学の現実は、次の10年間の医学の現実とは何の関係もない――。これは米国国立がん研究所のリチャード・クラウスナー所長ががん治療について述べた言葉だが、岡山大学大学院教授で循環器内科を専門とする伊藤浩医師は、心不全につい...
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研究は進むが…AIを使った診断と治療にはまだ課題が残る
AI(人工知能)を使った心臓疾患に対する診断の研究が急速に進んでいる現状について前回お話ししました。ただ、現場で本格的に運用するためにはクリアしなければならない課題があるのも事実です。 まずは費用の問題です。AIを使った診断...
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医学部に入学する時点から国が丸抱えして管理するのも一案
医師を目指す学生の質が落ちている――。このところそう感じることが多くなったと前回お話ししました。考えられる要因はいくつもありますが、医学教育制度の見直しも必要だと考えています。 これまでは、全国の国公立大学の医学部と私立大学...
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“裾野”が広がり医師を目指す学生の質が落ちている
3月いっぱいで順天堂医院の院長職を退いて「一教授兼一外科医」に戻り、これからは若手医師の指導や育成にもさらに力を注いでいくつもりです。近ごろ、医師を目指す若い学生の質が落ちていると感じるだけになおさらです。 私が医学部に入学...
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血液サラサラの薬を飲む患者の手術では「出血」に気を配る
心臓疾患を抱えている人の多くは、血栓ができるのを防ぐために血液をサラサラにする薬を服用しています。たとえば、狭心症や心筋梗塞の患者さんには「抗血小板薬」、人工弁置換術で機械弁を入れた人や、脳梗塞を起こしやすい心房細動の患者さんには「...
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事故を防ぐため改めて手術チームの労働環境を見直す必要が
昨年11月末、京都大付属病院が心臓手術で起こった死亡事故を公表しました。6月に大動脈弁狭窄症だった60代の女性に対して人工弁置換術を実施した際、心臓内に挿入する肺動脈カテーテルを右房壁に縫い込んでしまい、引き抜こうとしたところ右房が...