星野監督時代は「陣形」が存在、いまでは考えられない乱闘の内幕
ここ最近、乱闘はめったに見られなくなった。WBCなどの国際大会が増え、球団の垣根を越えて同じユニホームを着る機会が多くなった。ベース上で敵同士が仲良く話す光景も珍しくない。
オフになれば、違う球団の選手たちが集まって自主トレする。俺らの時代は考えられなかった。他球団の選手と笑顔で話そうものなら、星野仙一監督から「オイおまえ、誰と話しとるんじゃ! 敵としゃべるな!」とカミナリを落とされるのがオチだった。
打席で相手捕手から「何があったんだ?」と声をかけられたこともある。中日ベンチから星野監督の怒声が聞こえたかと思えば、「ドン!」と椅子を蹴り上げる音がするからだ。そういうときは星野監督にバレないように、ベンチに背を向けて話したり、うつむきながらボソッとしたりした。仲良く話すそぶりを微塵も見せないのが、星野中日の暗黙のルールだった。
相手には全力でぶつかるのがモットーで、乱闘も全力。全員参加は当然で、参加しなかった選手は問答無用で罰金を取られた。
実は、星野中日には乱闘用の「フォーメーション(陣形)」があった。「あの選手はあいつに行け」「監督を守るのはこの人とこの人」などと、それぞれの選手に役割が与えられ、マークする相手も決められていた。まるでサッカーである。