週間読書日記
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山本幸久(作家)
2月×日 9歳の女の子がボクシングをはじめる小説を書いた。「あたしの拳が吼えるんだ」(中央公論新社 1800円+税)、絶賛発売中です。いきなり自著の宣伝で申し訳ない。この小説を書く際、頭の片隅にあった…
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梶よう子(作家)
2月×日 2月は日数が少ない上に連休があり、小説誌の締め切りが重なるという辛い状況に陥った。そのため読書を楽しむ余裕など1ミリもないのだが、就寝前には必ずなにかしら積読状態にある本を開く。さて、「創…
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樋口裕一(多摩大学名誉教授・作家)
2月×日 自宅で執筆。午後は、昨日に引き続いて、アンドリス・ネルソンス指揮、ウィーンフィルのベートーヴェン交響曲全集のCDを取り出して聴いた。第九だけ購入後すぐに聴いて、その雄弁な演奏に驚嘆したが、改…
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平川克美(作家)
2月×日 「うしろめたさの人類学」(ミシマ社)で毎日出版文化賞を受賞した松村圭一郎の最新作「これからの大学」(春秋社 1900円+税)を読む。 「学び」と「知」がテーマなので舞台は大学だが、松村…
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石原壮一郎(コラムニスト)
1月×日 ああ、またマヌケな失敗をしてしまいました。まだ1月なのに、今年に入って何回目でしょう。せっかく買っておいた手土産を忘れていったり、余計なひと言で相手を怒らせたり……。 そんな折も折、…
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家田荘子(作家・僧侶)
1月×日、年明けは毎年4日間、深夜の海に入って水行をし、災害が起こらぬよう、1日も早い復興と、人々の穏やかな生活とを祈願させて貰う。山岳行者で高野山の僧侶なので、20年間年中、深夜の海で一人行を続けて…
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新井素子(作家)
1月×日 今年は岡山でお正月。うちの夫が去年還暦を迎えたので。還暦になると、何故か同窓会ってやりだすよね。で、岡山の場合(遠いから)大体みんなが帰省しているお正月にってことになる。 ただ……私…
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茂木健一郎(作家・脳科学者)
12月×日 研究室の忘年会の前のゼミ。学生やOBたちと、最新の脳科学の論文を読む。小俣くんと話していて、最近は社会の「格差」や「平等」に興味があるというから、ちょうど読み終わった「資本主義の終わりか、…
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香山リカ(作家・精神科医)
12月×日 ツイッターにログインすると、まず目に飛び込んでくるのが「いつ日本から出て行くんだ?」「バアさん、反日活動で稼いでるな」といった罵倒リプライ。勤務先の大学に行くと、広報課の職員が「また先生へ…
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小澤紀美子(東京学芸大学名誉教授)
10月×日 北京の大学の友人から突然のメール。11月初旬中国武漢で開催される自然教育大会への招へい。 20世紀の終わり現職の大学教員として北京の大学と環境教育の共同研究を開始し、その後の中国と…
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上田恵介(日本野鳥の会会長 立教大学名誉教授)
11月×日 晴れ渡ってはいるが肌寒い晩秋の朝。窓の外から「ヒッヒッ」という声が聞こえてくる。遠くシベリアから渡ってきた小鳥のジョウビタキの声である。 今日は出かける用事もないので、埼玉在住のア…
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吉村喜彦(作家)
11月×日 新作の小説「バー堂島」(角川春樹事務所 580円)のプロモーションで大阪に。新幹線のなかで、中沢新一著「大阪アースダイバー」(講談社 1900円)を再読。今回の小説の表紙は、白地にカンパリ…
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坂崎重盛(エッセイスト)
11月×日 俳句歳時記や季語集の類の本が目にとまると、つい入手してしまう“悪癖”がある。 人から句会に呼ばれたり、友達と句会を催したりして、初心者なりに句を作ることを楽しんだりしはじめたころは…
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大竹昭子(作家)
10月×日 姪が台湾に留学していたときの友人が日本にやってきた。色白の涼しい目をした女の子で、いまの日本にはこういう子はいないなあ、と思いながら、どんなとこに行きたいの? と訊くと、リストを取りだして…
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絲山秋子(作家)
10月×日 県内の友人宅に行く途中で立ち寄った道の駅に、パン屋が店を出していた。ハンバーガーもサンドウィッチもびっくりするほどおいしくてユニークで、その上しゃれている。街道沿いのそれほど遠くない場所に…
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柚木麻子(作家)
9月×日 「田辺聖子さん お別れの会」に。展示してある田辺さんの写真を眺めて、直木賞選考会でも男性陣の中でポンと一人赤いセーター姿でいらっしゃるような、そのビビッドなお洒落に感動する。手をとりあって一…
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太田肇(経営学者・同志社大学教授)
10月×日 朝の授業に遅れまいと地下鉄の階段を急ぎ足で降りていたら、左膝に激痛が走った。目の前に停まっている電車に乗ることもできない。昨年から小康状態を保っていた関節痛が再発したのだ。それ以来、片足を…
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奥野修司(作家)
10月×日 今年の春から「食と病」について調べているが、取材のほとんどが研究者とあって、論文読みに明け暮れている。その合間に読むなら軽めのノンフィクションがいいだろうと、デイヴィッド・ハワード著「詐欺…
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天笠啓祐(科学ジャーナスリスト)
9月×日 今年は残暑が長い。冷房は体調を崩すため、氷枕をしながら寝ているが、面白い本に出会うと、その氷の存在を忘れて寝不足になる。そのような1冊がドノヴァン・ホーン著「モービー・ダック」(こぶし書房 …
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岡崎武志(書評家)
8月×日 酷暑の夏。じたばたせず、ほとんど家に閉じこもって本を読む日々だった。8月は日本にとって死と鎮魂の月でもあり、気を引き締めるような本を読むことにしている。 「プリーモ・レーヴィ全詩集」(…