週間読書日記
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飯田哲也(環境エネルギー政策研究所所長)
8月×日 京都アニメーション放火大量殺人事件は、今なお痛ましさが生々しい。その犯人を「下級国民のテロリズム」と断じた橘玲は、近著「上級国民/下級国民」(小学館 820円+税)の中で、日本や世界で進む知…
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森達也(映画監督)
8月×日 今撮影を進めているドキュメンタリー映画は新聞記者が被写体だ。彼女が所属する東京新聞社には何度も行って撮影している。旧知の記者も多い。社会部の瀬口晴義はその1人。でも彼は撮影を嫌がる。カメラを…
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朝暮三文(作家)
7月×日 自著「おつまミステリー」が好評。なのでハヤカワ文庫、ハーラン・エリスン編「危険なヴィジョン2」(浅倉久志他訳 1200円)と既刊の1を読む。10数年前、「闇の展覧会」が20年ぶりで復刊された…
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萩原浩(作家)
7月×日 どうやら梅雨が開けて、さあ夏です。 夏の私は忙しい。仕事がなくても忙しい。自宅のささやかな庭で野菜を育てているからだ。スイカとメロンの人工受粉。キュウリとナスとゴーヤとインゲンマメの…
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大石芳野(写真家)
7月×日 雨にけぶる樹木が池を囲むように鬱蒼としている光景のなか、ツバメが飛び交う。窓越しのその美しくも素早い飛び方に目を奪われながら視線を追う。書棚から取り出した1冊の、かなり黄ばんで書き込みなどを…
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朱野帰子(作家)
6月×日 私の小説が原作のテレビドラマ「わたし、定時で帰ります。」がニューヨークタイムズ紙で紹介された。記事のコメント欄には日本の長時間労働の実態への驚きがつづられていた。一方で、「アメリカにだって同…
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稲葉稔(作家)
6月×日 仕事が進まず悶々。朝から根を詰めているがはかどらない。 ゴルフの練習に行こうかと考えるが、表は真夏の暑さなのでやめる。 ならば、愛犬の散歩をしようと思い立ち、連れ出そうとする…
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本城雅人(作家)
6月×日 ひどい腰痛に悩まされ、ブロック注射を受けたことがある。「車で来ないでね」と言う医者に、「自転車は?」ときいたら、「無理に決まってるでしょ。麻酔で歩けないかもしれないのに」と叱られた。ところが…
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吉田敏浩(ジャーナリスト)
6月×日 梅雨に入った。今日も何かと原稿を書いている。雨音が耳に届く。 「ジャングルで隠れている間は、枯れ葉で屋根を作るんだけど、あっという間にびしょびしょになっちゃう。だからこんな雨の日は、村…
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鎌田慧(ルポライター)
6月×日 妻を連れて病院にいった。風邪気味ですと言うと、ついでに診てあげましょう、と女医さん。診察券を急拵えしてレントゲンをかけると、肺炎という。入院はしないで抗生物質。 6月×日 抗生物質で快…
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大森望(書評家・翻訳家)
6月×日 急に暑くなってきたので、上半身はTシャツに衣替え。アイドル現場用のオタクTシャツを別にすると、ワードローブの中心は各種SF系Tシャツ。ヴォネガット「チャンピオンたちの朝食」とか、バージェス「…
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安藤祐介(作家)
5月×日 平成の終わりと令和の始まりをまたぐ大型連休を経て、朱野帰子さんの「わたし、定時で帰ります。ハイパー」(新潮社 1400円)を読了。同作は1年前に第1弾が刊行されて大きな反響を呼び、私もこの「…
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中島恵(ジャーナリスト)
5月×日 講演で京都に行ってきた。駅を降りてびっくり。平日だというのに、タクシー乗り場に100メートル以上と思われるほど多くの観光客が並んでいるではないか。運転手さんによると、タクシー乗り場の数が減っ…
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上野誠(奈良大学文学部教授)
4月1日 新元号が「令和」に決まった。「万葉集」が出典ということで、次々に取材が舞い込む。が、しかし。論文もちゃんと書かねば。困った。 4月X日 今取り組んでいるのが、「万葉集」にみえる外国名を…
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佐川光晴(作家)
5月×日 1日から元号が令和になった。64年も続いた昭和が裕仁天皇の崩御により唐突に終わり、新元号が「平成」と発表された時の慌ただしさを思うと隔世の感がある。 当時私は23歳、2ヵ月後の3月末…
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吉田友和(旅行作家)
4月×日 体重の増加に歯止めがかからない。理由は自分でもわかっている。食べ過ぎである。近頃は美味しいものに出合うために旅をしていたりもする。しかも、年甲斐もなく店では大盛を頼むのが基本スタイル。 …
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藤井青銅さん(作家・脚本家)
4月×日 担当しているオードリーのオールナイトニッポンの立ち合い。先日は日本武道館での番組ライブも話題になった。深夜放送明けの翌日は仕事にならず、読書日だ。杉原里美著「掃除で心は磨けるのか」(筑摩書房…
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友井羊(作家)
3月×日 最近取材と趣味を兼ね、東京の老舗の飲食店を巡っている。明治や大正、店によっては江戸から続く味を今も楽しめるのは幸福なことである。そこで森まゆみ著「東京老舗ごはん」(ポプラ社 620円)を片手…
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司修(画家)
X月Y日Z時 深夜、倒壊率76%の住居内に造った耐震シェルターのベッドで目覚める。雨の音に交じって、遠慮がちなノックが聞こえる。夜光時計の針は午前3時。ノックがなくなる。息を殺して外の動きを感じ取ろう…
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石川理夫 温泉評論家
2月×日 ふだん“読書”といっても、原稿執筆の史資料探しに複数の書物斜め読みが主で、温泉取材旅が私のフリーな読書タイムとなる。旅には手軽な新書がなじむ。とはいえ、遠藤慶太著「六国史」(中央公論新社 8…