茂木健一郎(作家・脳科学者)

公開日: 更新日:

12月×日 研究室の忘年会の前のゼミ。学生やOBたちと、最新の脳科学の論文を読む。小俣くんと話していて、最近は社会の「格差」や「平等」に興味があるというから、ちょうど読み終わった「資本主義の終わりか、人間の終焉か? 未来への大分岐」(集英社 980円)を差し上げた。マルクス・ガブリエル、マイケル・ハート、ポール・メイソンという思想界のスターたちに、日本の俊英、斎藤幸平さんが向き合う。斎藤さんが全く対等に話しているのが良い。グローバル化した世界における日本発の出版の一つのあり方だろう。紙の本は、読み終わるとこうやって人に回したりできるところがやはり良い。
12月×日 担当しているラジオ番組の収録も「年末進行」。ゲストにデザイナーの奥山清行さんがいらしてくださった。フェラーリからJR東日本の豪華列車「四季島」まで、奥山さんのデザインは世界レベルで見てトップオブトップだ。そんな奥山さんの哲学がたっぷり詰まった「ビジネスの武器としての『デザイン』」(祥伝社 1600円)は日本のこれからを考える上での必読書。資源のない日本が発展するためには、日本の良さを活かすデザインの力が不可欠。その「デザイン」の本質を世間は誤解していると奥山さんは言う。
12月×日 寒さも本格化してきたけれども、東京マラソンへの出場予定もあるから、毎朝の走り込みは欠かせない。東京オリンピックも近づいてきた。アスリートたちの熱い闘いを間近に見られると思うと、わくわくする。私のランニングはへなちょこだが、走ってアスリートたちを応援したい気持ちにもなる。為末大さんの「生き抜くチカラ ボクがキミに伝えたい50のことば」(日本図書センター 1300円)は、400メートルハードルでメダルを獲得し、未だに日本記録保持者の卓越したアスリートの深い洞察が満載されている。子ども向けの本だけれども、大人が読んでも面白い。
1月×日 年が改まって、気が引き締まる。今年もたくさんの面白い本と出会いたい。

【連載】週間読書日記

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    阪神・梅野がFA流出危機!チーム内外で波紋呼ぶ起用法…優勝M点灯も“蟻の一穴”になりかねないモチベーション低下

  2. 2

    梅野隆太郎は崖っぷち…阪神顧問・岡田彰布氏が指摘した「坂本誠志郎で捕手一本化」の裏側

  3. 3

    「高市早苗首相」誕生睨み復権狙い…旧安倍派幹部“オレがオレが”の露出増で主導権争いの醜悪

  4. 4

    巨人・戸郷翔征は「新妻」が不振の原因だった? FA加入の甲斐拓也と“別れて”から2連勝

  5. 5

    国民民主党「選挙違反疑惑」女性議員“首切り”カウントダウン…玉木代表ようやく「厳正処分」言及

  1. 6

    時効だから言うが…巨人は俺への「必ず1、2位で指名する」の“確約”を反故にした

  2. 7

    パナソニックHDが1万人削減へ…営業利益18%増4265億円の黒字でもリストラ急ぐ理由

  3. 8

    ドジャース大谷翔平が3年連続本塁打王と引き換えに更新しそうな「自己ワースト記録」

  4. 9

    デマと誹謗中傷で混乱続く兵庫県政…記者が斎藤元彦県知事に「職員、県議が萎縮」と異例の訴え

  5. 10

    阪神に「ポスティングで戦力外」の好循環…藤浪晋太郎&青柳晃洋が他球団流出も波風立たず