本の森
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「歪んだ正義」大治朋子著
新聞記者としてワシントン特派員、エルサレム特派員などを歴任し、テロリズムに間近に接した著者は、テロリズムの心理を学ぶために2年間休職留学してイスラエル・ヘルツェリア学際研究所で学ぶ。講義の冒頭で、教…
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「誓願」マーガレット・アトウッド著 鴻巣友季子訳
米国のキリスト教原理主義一派がクーデターで興したギレアデ共和国では、出生率の著しい低減に危機感を募らせ、全ての女性から仕事と財産を没収、妊娠可能な女性たちを「侍女」としてエリート層の男性に派遣する―…
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「フィッシュ・アンド・チップスの歴史」パニコス・パナイー著 栢木清吾訳
まずい料理の代名詞というありがたくない評判を冠せられているイギリス料理だが、その理由としては、下味をつけない、食材が少ない、家庭料理の衰退などいろいろな理由が挙げられている。 それはともあれ…
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「世界は幾何学で作られている」アミーア・アレクサンダー著 松浦俊輔訳
「この偉大な書物、つまり宇宙は数学の言葉で書かれており、その文字は三角形や円などの幾何学的図形」であると言ったのはガリレオ・ガリレイだ。古来、幾何学は完璧な秩序、回想、調和を表し、普遍的な秩序の象徴で…
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「音楽を感じろ」ニール・ヤング&フィル・ベイカー著 鈴木美朋訳
映画「いちご白書」で、主人公のサイモンとリンダが買い出しから帰ってきて仲間の待つ講堂のドアを開けるのとほぼ同時にニール・ヤングが歌う「ヘルプレス」が流れてくる。川を照らす真っ赤な夕焼け、夕空に浮かぶ…
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「『役に立たない』科学が役に立つ」エイブラハム・フレクスナーほか著 初田哲男監訳 野中香方子ほか訳
基礎科学とは、真理の探究そのものが目的とされ、応用化学のようにすぐには「役に立たない」が、長期的な社会課題の解決や新産業の創出に欠かせないものだ。 本書はプリンストン高等研究所の現所長、ダイ…
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「女ともだち 靜代に捧ぐ」早川義夫著
1960年代末、ロックバンドのジャックスは独特のオーラをまとい、その後のロックシーンに大きな影響を与えたが、短い活動の後に解散。その後、中心メンバーの早川義夫が本屋さんになり、「ぼくは本屋のおやじさ…
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「目に見えない傷」レイチェル・ルイーズ・スナイダー著 庭田よう子訳
2017年、世界中で5万人の女性がパートナーまたは家族によって殺されている。アメリカでは毎月15人の女性が親密なパートナーによって“銃”で殺されている。こうした事実があるにもかかわらず、これまでDV…
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「白い病」カレル・チャペック著 阿部賢一訳
中国発の新しい病気で、優に500万人が亡くなり、1200万人が罹患(りかん)し、少なくともその3倍の数の人間が無症状のまま世界中を駆けずり回っている――現在のCOVID―19を彷彿(ほうふつ)させる…
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「明治を生きた男装の女医 高橋瑞物語」田中ひかる著
菅新政権の看板政策のひとつに不妊治療の保険適用がある。少子化対策の一環として打ち出されたものだ。少子化が問題になって久しいが、昨年の合計特殊出生率は1・36で、戦後のベビーブームの1947年には4・…
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「心を病んだらいけないの? うつ病社会の処方箋」斎藤環・與那覇潤著
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、失業や業績悪化による経済的不安をはじめ、リモートワークや時差出勤から通常勤務に戻った際にうまく適応できないなど、さまざまな不安が蔓延(まんえん)している。多くは軽…
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「〈うた〉起源考」藤井貞和著
何事につけてもその起源を問うことは難しい。たとえば、本書の主題たる〈うた〉という言葉。有名なのは、本居宣長から平田篤胤、そして折口信夫が提唱した「うつたへ(訴え)」を語源とするもの。その他に「うちあ…
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「新敬語『マジヤバイっす』 社会言語学の視点から」中村桃子著
2014年、電子掲示板にある投稿があった。上司に「マジヤバイっすね」という言い方をすごく見下されて腹が立った。でも「っす」は丁寧語っすよね、と。それに対して圧倒的多数が「っす」は丁寧語ではないと投稿…
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「とうがらしの世界」松島憲一著
ここ数年は第4次激辛ブームといわれている。第1次は1984年に発売された「カラムーチョ」に端を発し、86年の新語・流行語大賞の新語部門で「激辛」が銀賞を受賞した。以後、それぞれのブームの特徴はあるが…
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「『バカ』の研究」ジャン=フランソワ・マルミオン編 田中裕子訳
最近流行の行動経済学は、旧来の人間は基本的に合理的な生き物であるという〈ホモ・エコノミクス〉理論に代わって、「人間は必ずしも最大の利益を求めるわけでも、常に合理的な行動をするわけではない」ことに注目…
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「歴史家と少女殺人事件 レティシアの物語」イヴァン・ジャブロンカ著 真野倫平訳
2011年1月、フランス南部のナント近郊に住む18歳のレティシア・ペレが誘拐・殺害され、数週間後、遺体はバラバラの状態で発見された。レティシアは幼い頃から家庭環境に恵まれず、双子の姉ジェシカと共に養…
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「見えない絶景 深海底巨大地形」藤岡換太郎著
昨年5月、人類が到達した最深点の記録が更新された。アメリカの海底探検家がそれまでより12メートル深い1万928メートル地点の潜行に成功したのだ。地上の最高峰エベレストがすっぽり入る計算だ。この地球最…
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「あいまいな会話はなぜ成立するのか」時本真吾著
夕食後の夫婦の会話。 妻「コーヒー飲む?」 夫「明日ね、出張で朝が早いんだ」 妻はコーヒーを飲むか否かを尋ねているのに、夫は飲む(イエス)とも飲まない(ノー)とも言っていない。それで…
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「病魔という悪の物語 チフスのメアリー」金森修著
緊急事態宣言が解除されてから2カ月余。再び新型コロナウイルスの全国的な感染拡大が懸念され、併せて無症候性キャリアーの増大が問題になっている。サイレントキャリアーが多くなれば、社会全体が疑心暗鬼に陥ら…
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「ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険」コーリー・スタンパー著 鴻巣友季子ほか訳
三浦しをんの「舟を編む」は辞書編纂に携わる人たちのちょっと奇矯な生態を描いているが、アメリカで最も歴史のある辞書出版社メリアム・ウェブスターの辞書編纂者であった本書の著者の「英語オタク」ぶりもなかな…
