(6)アルツハイマー病を引き起こす脳のゴミ…「原因探し」から「始まり」を捉える時代へ
アルツハイマー病の原因は何か──。この問いに対する回答が、いま新たな段階を迎えている。
1990年代以降、研究の中心にあったのは「アミロイドβ(Aβ)仮説」だ。脳内にアミロイドβが蓄積し、それが神経細胞を傷つけて認知症を引き起こすという考え方だ。実際、家族性アルツハイマー病ではアミロイドβ産生に関わる遺伝子異常が見つかっており、この仮説は長く支持されてきた。その成果として近年、レカネマブやドナネマブといったアミロイドβを除去する抗体医薬が実用化され、認知機能低下を遅らせる効果が示されている。
しかし、アミロイドβを取り除いても認知機能の改善は限定的であり、脳内に多くのアミロイドβが蓄積していても認知症を発症しない人がいることも分かってきた。このため現在では、「アミロイドβだけでは病気の全体像は説明できない」という考え方が広がっている。
その流れを考えるうえで重要な出来事のひとつが、2006年に発表された「Aβ56」という特殊なアミロイドβ凝集体に関する論文だ。この論文は、Aβ56が記憶障害を引き起こす原因であると報告し、世界中の研究に大きな影響を与えた。


















