(5)睡眠中に脳は“大掃除”される…グリンパティック系の正体
「睡眠不足が続くと頭がぼんやりする」「徹夜が続くと物忘れが増える」──。こうした現象は単なる疲労ではないかもしれない。近年の脳科学で明らかになってきたのは、睡眠中の脳では老廃物を洗い流す「大掃除」が行われているという事実だ。この仕組みは「グリンパティック(glymphatic)系」と呼ばれ、アルツハイマー病をはじめとする神経変性疾患との関連でも大きな注目を集めている。ハーバード大学医学部&ソルボンヌ大学医学部客員教授の根来秀行医師が言う。
「脳の重さは体重の約2%しかないにもかかわらず、全身のエネルギーの約20%を消費することが知られています。その結果、神経細胞の活動によって不要になったタンパク質や代謝産物が絶えず生み出されるのです。代表的なものがアミロイドβやタウタンパクで、これらが十分に除去されないと脳内に蓄積し、認知症の発症リスクを高めると考えられています」
かつて、脳にはリンパ管が存在しないため、「脳のゴミはどのように処理されるのか」が長年の謎だった。その答えとして、2012年に米ロチェスター大学のマイケン・ネダーガード教授らが提唱したのがグリンパティック系である。グリア細胞(神経を支える細胞)とリンパ系を組み合わせた造語で、脳脊髄液が脳内へ流れ込み、細胞の隙間を通って老廃物を洗い流し、最終的に静脈や髄膜リンパ管へ排出する「脳の排水システム」といえる。


















