(8)なぜ、年を取ると昔の夢を見ることが増えるのか
認知症でも、この特徴はよく見られる。最近の出来事は忘れていても、子どもの頃の家族や故郷の話になると、驚くほど鮮明に語ることがある。これは「新しい記憶」と「古い記憶」が、脳の中で異なる仕組みで維持されているためだ。
では、この記憶の変化は夢にどう影響するのだろうか。夢は、脳の中にある記憶を材料にしてつくられる。若い頃は、仕事や人間関係、新しい経験など、毎日のように新しい情報が脳に入ってくる。そのため、夢にも最近の出来事が登場しやすい。
「しかし、年齢とともに新しい経験の記憶が少なくなると、脳は利用しやすい古い記憶を材料として使う割合が増える可能性があります。その結果、若い頃の家や家族、学生時代の友人などが夢に現れやすくなると考えられているのです」(根来医師)
睡眠中には「記憶のリプレー」と呼ばれる現象も起こる。これは、日中に経験した出来事を海馬が再生し、大脳皮質へ送り返す仕組みである。この働きによって記憶は整理され、必要な情報として残される。興味深いことに、リプレーされる記憶は単なる記録の再生ではない。脳は過去の経験を組み替え、新しい意味を見いだそうとしている。夢の中で、現実にはあり得ない場所や人物の組み合わせが登場するのは、この「記憶の再編集」が関係している可能性がある。


















