数々の映画が「男目線」であることを明らかに

公開日: 更新日:

「ブレインウォッシュ セックス-カメラ-パワー」

 ちかごろ耳にすることの多い新語に「構造的差別」というのがある。「構造的人種差別」は慣習化された社会制度の中で一筋縄では解決できなくなっている人種差別のこと。同じように「構造的性差別」もある。これを娯楽映画を素材にわかりやすく、かつ鮮烈に告げるのが「ブレインウォッシュ セックス-カメラ-パワー」。連休明けに東京から順次全国公開されるドキュメンタリーである。

 監督のニナ・メンケスは「孤高のフィルムメーカー」とも紹介されるが、大学の映画学科で長年教えてきた人だから世捨て人なわけではない。が、日本で一般公開されるのは初めて。今回は「ニナ・メンケスの世界」という特集上映で、初期の「マグダレーナ・ヴィラガ」などの劇映画とともに封切られる。

「洗脳」を意味する「ブレインウォッシュ」は過去の数々の映画が、名作も凡作もふくめ、いわゆる「男目線」の総動員で演出・編集されていることを次々に明らかにする。というと堅物の説教と思われるかもだが、それではアメリカの大学では通用しない。ヒチコックやゴダールからタランティーノ、P・T・アンダーソンまでの作例をちりばめる説得力が圧巻。

 入浴場面で「バスタブを見たとたん女の裸が出てくるのを期待する自分がいる」という映画学科の女子学生の言葉など、いかに観客の想像力自体がシステマチック(構造的)に「男の目」の支配下にあるかを告げているだろう。

「構造的差別」という概念は90年代の批判理論で生まれた。日本ではなかなか一貫した潮流にならないが、ジェンダー法学会編「講座 ジェンダーと法 第1巻 ジェンダー法学のインパクト」(日本加除出版 4180円)でその一端がわかる。特に第13章は男支配の日本弁護士会が男女共同参画の機運下でも「環境型セクハラ」に興じていたことなどを率直に指摘している。 <生井英考>

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    DeNA三浦監督まさかの退団劇の舞台裏 フロントの現場介入にウンザリ、「よく5年も我慢」の声

  2. 2

    2度目の離婚に踏み切った吉川ひなの壮絶半生…最初の夫IZAMとは"ままごと婚"と揶揄され「宗教2世」も告白

  3. 3

    なぜ「愛子天皇」ではダメなのか? 美智子さまが心情を吐露する出版物を準備中…と政界で話題

  4. 4

    鈴木紗理奈以外にもいた…あのちゃんが過去に口にしていた“キライな芸能人”の実名

  5. 5

    嵐が去る前に思い出す…あの頃の「松本潤」と「大野智」

  1. 6

    日本ハムがソフトBに8戦全敗の悲惨…崩壊投手陣が口にする「伏見寅威ロス」

  2. 7

    元サッカー日本代表・大津祐樹さんはビジネスでも成功 年商300億円の高級腕時計会社の社長に

  3. 8

    巨人桑田二軍監督の“排除”に「原前監督が動いた説」浮上…事実上のクビは必然だった

  4. 9

    DeNAビシエド電撃引退のウラとフロント批判殺到の必然《もうハマスタに行こうとは思わない》

  5. 10

    文科省「教育の政治的中立性」で波紋…なぜ森友学園がセーフで、同志社国際がアウトなのか?