小澤紀美子(東京学芸大学名誉教授)

公開日: 更新日:

10月×日 北京の大学の友人から突然のメール。11月初旬中国武漢で開催される自然教育大会への招へい。

 20世紀の終わり現職の大学教員として北京の大学と環境教育の共同研究を開始し、その後の中国との交流は広がり、北京での2週間近くの集中講義(日本語で)にまで発展した。

 かつて中国の大学ホテルのTVは日本のNHKの番組を流していたので、日本のニュースを知ることができていた。しかし今や日本の番組は放映されていない。でも、中国の学生はしっかりとパソコンで日本の情報を得て大好きな日本のアニメを常時観ている。

 今回の訪中で、1人っ子政策のその後を知りたくて、袁静著「中国『草食セレブ』はなぜ日本が好きか」(日本経済新聞出版社 850円)を入手。イッセイミヤケを着こなす若い男性、かわいいファッションの女の子。文化革命を知らない日本で買い物の20代、30代の富裕層が増えているらしい。

 一番驚いたことは、大会参加者が1300人で、名札のQRコードで受付し、すべてスマホ決済。印刷物の配布は全くない。参加者の大半は大会プログラムをスマホでチェック。もちろんアリババ財団からの補助金を得ての大会運営で、お金を使う場面は全くなし。

 中国の大学が所有するホテルに宿泊して、学外へ出ることなく、1日中、巨大な大学構内で過ごせる環境。でもトイレには気を使って過ごしていた。ホテルのトイレは西洋式であるが、大会の会場となっている大学の講義棟は中国式でスクワットができる身体でよかったと胸をなでおろす。

 35年前の初訪中時は仲間と建築の視察が目的であったが、北京、蘇州、上海、西安と周り、ニーハオトイレに往生したが、中国は目下、トイレ革命進行中。ジャック・シム著「トイレは世界を救う」(PHP新書 880円)によれば、『トイレ革命』が観光価値を高め、集客につながると中国観光局がトイレの基準を設定しているという。

 80年代後半から日本で仲間と公衆トイレ改善の運動を行っていたことを懐かしむ中国への旅となった。

【連載】週間読書日記

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ヤクルト村上宗隆と巨人岡本和真 メジャーはどちらを高く評価する? 識者、米スカウトが占う「リアルな数字」

  2. 2

    大山悠輔が“巨人を蹴った”本当の理由…東京で新居探し説、阪神に抱くトラウマ、条件格差があっても残留のまさか

  3. 3

    中山美穂さんの死を悼む声続々…ワインをこよなく愛し培われた“酒人脈” 隣席パーティーに“飛び入り参加”も

  4. 4

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  5. 5

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  1. 6

    陰で糸引く「黒幕」に佐々木朗希が壊される…育成段階でのメジャー挑戦が招く破滅的結末

  2. 7

    豊作だった秋ドラマ!「続編」を期待したい6作 「ザ・トラベルナース」はドクターXに続く看板になる

  3. 8

    巨人・岡本和真の意中は名門ヤンキース…来オフのメジャー挑戦へ「1年残留代」込みの年俸大幅増

  4. 9

    悠仁さまは東大農学部第1次選考合格者の中にいるのか? 筑波大を受験した様子は確認されず…

  5. 10

    中山美穂さんが「愛し愛された」理由…和田アキ子、田原俊彦、芸能リポーターら数々証言