森達也(映画監督)

公開日: 更新日:

8月×日 今撮影を進めているドキュメンタリー映画は新聞記者が被写体だ。彼女が所属する東京新聞社には何度も行って撮影している。旧知の記者も多い。社会部の瀬口晴義はその1人。でも彼は撮影を嫌がる。カメラを向けると身をかわす。でも撮る。普段はいろんな人を撮ったり取材したりしているのだから、自分だって時と場合によっては顔や名前を晒すべき。これは今回の映画のテーマのひとつだ。

 その瀬口がオウムについて書いた「オウム真理教・偽りの救済」(集英社 1600円+税)。共感する個所もあれば、まったく意見が違う個所もある。でもそれでよい。「事実はない。あるのは解釈だけだ」。これはニーチェが残した言葉だ。解釈とは視点。言い換えれば真実。それは人の数だけある。僕は僕の真実を表現するだけだ。

8月×日 れいわ新選組の慰労会に呼ばれた。参加したのは今回の候補者たちと、ボランティアも含めてれいわ新選組のスタッフたち。そして党首の山本太郎。現状は本当に最悪の政権が続いている。安全保障法制や特定秘密保護法は成立した。教育基本法は改正されて核兵器禁止条約には署名しない。アメリカへの従属度はさらに強化されて、内閣人事局を設置して独裁的政治を可能にした。

 まだまだいくらでもある。でも山本も含めてみんなの表情は明るい。現状は確かに最悪だけど、でもまだ間に合う。そう思いたくなる1冊。山本太郎著「僕にもできた!国会議員」(筑摩書房 1400円+税)。

8月×日 ニューズウィーク編集者と打ち合わせ。以前は新聞記者だった長岡義博編集長も同席した。彼が社を辞めた理由のひとつは、僕の映画「A」を見たからだと打ち明けられる。これは申し訳ない。でも大切なことは自分で考えること。組織を主語にしないこと。その意味で貢献できたのなら嬉しい。手渡されたニューズウィーク最新号の特集は「香港の出口」。まさか天安門のような暴挙を中国は選択しない。願望も含めてそう思っていたけれど、それは楽観的すぎるのかもしれない。そんなことを考えながら帰りの電車で読み耽った。

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

最新のBOOKS記事

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    志村けんさん「芸人運」にかき消された女性運と運命の相手

  2. 2

    志村けんさんの店も…銀座のクラブで“コロナ蔓延”の根拠

  3. 3

    藤浪ら感染の“合コン” ゾロゾロ出てきた参加者32人の素性

  4. 4

    志村さんが最期まで貫いた不詳の弟子・田代被告への“温情”

  5. 5

    隠れコロナか 東京都で「インフル・肺炎死」急増の不気味

  6. 6

    志村けんさん 泥酔記者に愛の一喝「話をちゃんと聞け!」

  7. 7

    深酒にガールズバー…志村けんコロナ感染で濃厚接触者多数

  8. 8

    コロナ対策に高まる期待 結核予防のBCGワクチンは救世主か

  9. 9

    やはり本命の彼女は…櫻井ファンがザワついた衝撃の“逸話”

  10. 10

    ビック3とは一線 志村けんさんが貫いたコメディアン人生

もっと見る