「カラスは飼えるか」松原始著

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「カラスは飼えるか」という問いは、①法律的にカラスを飼うことは許されるのか②実際に自分の家で飼うことが可能か、の2つがあるが、答えは「基本、飼えない」である。

 日本では野鳥は基本的に飼ってはいけないことになっているが、カラスは狩猟鳥なので狩猟期間中に捕獲するのは違法ではない。また自治体によっては飼育を許可しているところもあり、例外的に認められている。②は、小型犬ほどの大きさで空を飛ぶいたずら好きのカラスを飼うのは「とんでもない大ごと」で、よほどの覚悟が必要だ。

 しかし、このタイトルには第3の問いが含まれている。小鳥のようにかわいくもなく不吉なイメージのつきまとうカラスなんぞをペットにしたいのか、という。確かにカラスに対するマイナスイメージは根強い。かつて石原慎太郎が都知事時代に、カラス対策プロジェクトを立ち上げ、「カラスのミートパイを東京名物として売り出したらどうか」などの発言もしていた。そんな悪者扱いされるカラスだが、我々はどこまでカラスのことを知っているのかという問いも生まれてくる。

 本書は「カラス先生」と呼ばれる著者が、カラスにまつわるさまざまな秘密を豊富なエピソードと共に明かしている。といってもカラスの話ばかりではなく、屋久島のサルのフィールド調査の話や、タカやフクロウなどカラス以外の鳥の話も織り交ぜながら、カラスという鳥がどういう特性を持ち、どのような暮らし方をしているのかを教えてくれる。

「カラス被害」のひとつにカラスが人を襲うというのがある。襲うとしたら我が子の安全を脅かされるという例外的状況のみで、その場合でせいぜい後ろから頭を蹴飛ばす程度だという。本来カラスはヘタレで、正面から襲う度胸はないそうだ。そんなヘタレな姿を知ると、カラスがかわいく思えてくる。

 ちなみに、著者はカラスは飼ったことはないが、食べたことがある。肉の味はお世辞にもうまいとはいえず、東京名物カラスのミートパイの需要は見込めないだろうとのこと。 <狸>

(新潮社 1400円+税)

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