保阪正康 日本史縦横無尽
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シリーズ「日本軍兵士たちの戦場体験」(53)中国や東南アジアの国が握る「従軍慰安婦」の生のデータ
従軍慰安婦問題などで、日本側の多くの資料、文書を押収したはずの中国をはじめとする東南アジアの国々が、例えば日本と韓国の間で論争が起こっている時になぜ沈黙を守るのであろうか。前回は軍医の感想を紹介した…
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シリーズ「日本軍兵士たちの戦場体験」(52)元軍医の証言、焼却しきれなかった慰安所の資料はどこへ
日本軍による強制連行は、総員でどの程度になったのか、正確な数字はわからない。統計は取っていないからだ。そのことは何を意味するか。正確な数を出すこと自体が戦時下の違法行為を認めることになるのだから、日…
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シリーズ「日本軍兵士たちの戦場体験」(51)「うさぎの追い込み作戦」と呼ばれた中国人青年強制連行
日本軍兵士のエピソードをいくつか語り続けよう。私の取材で確認した話を中心にしていくが、兵士として従軍した世代は着実に減っている。かつては自分の存命中には公表しないで欲しいという前提で多くの話も聞かさ…
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シリーズ「日本軍兵士たちの戦場体験」(50)武装解除を拒否し、アジアの独立運動に参加した日本兵たち
中国軍の捕虜になった日本軍の兵士たちの姿をいくつか紹介してきた。これとは別に昭和20(1945)年8月15日を境に、東南アジアの国々に駐屯していた日本軍は次々に連合国側に武装解除することとなった。こ…
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シリーズ「日本軍兵士たちの戦場体験」(49)八路軍の「思想教育」日本社会を知り尽くした政治将校の説得術
中国軍に編入されている八路軍は、共産軍を指す名称であったが、その部隊の捕虜になった日本軍兵士は、思想教育や八路軍の規律に納得してその一員に組み込まれることを了解していくことになる。むろん延安での捕虜…
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シリーズ「日本軍兵士たちの戦場体験」(48)戦いたくない兵士たちを「戦闘員」に変える教育とは
前回書いたように、前線では中国側の捕虜になった日本軍兵士が、かつての自らの所属部隊を訪問するというケースもあった。珍しいケースとはいえ、日本軍兵士の心情は決して戦争へ傾斜する心理だけで語ることはでき…
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シリーズ「日本軍兵士たちの戦場体験」(47)戦場の転向者たち、捕虜となった日本兵が見た「聖戦」の真実
元兵士たちの動きを詳しく調べていくと、常識では考えられない光景をいくつも想像できる。捕虜として延安で反戦教育を受けた日本兵は、程度の差はあれ、この戦争が聖戦とは言い難いと誰もが思うようになる。日本軍…
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シリーズ「日本軍兵士たちの戦場体験」(46)日本軍が捕虜になるなと言った本当の理由
中国軍の捕虜になって、思想教育を受け、侵略戦争に加担するのは嫌だと決意した日本軍の元兵士は、前線において日本軍兵士に呼びかけを行っている。呼びかけというのは、中国軍の捕虜になるように説得することだっ…
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シリーズ「日本軍兵士たちの戦場体験」(45)生きるための「転向」、中国・八路軍の「思想教育」
Hの兵士脱出の話を続けよう。山西省の一角に駐屯しているうちに3カ月は4カ月、5カ月と時間が過ぎていった。短期に決着がつくなどというのは、上級将校たちのいい加減な口癖だとわかると、兵士たちは次第に心理…
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シリーズ「日本軍兵士たちの戦場体験」(44)中国戦線に余裕があった時期だから結核偽装は成功したのだろう
むろんここまでに至るには多くの難問や壁もある。それを乗り越えていくにはなんとしても軍隊生活からは脱出するのだという強い信念が必要だ。これがないと成功はおぼつかない。ただし、ひとたび脱出したならば、結…
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シリーズ「日本軍兵士たちの戦場体験」(43)Kは患者を偽装するため、軍医の従軍経験や経歴まで調べたという
軍から脱出したいと考える大阪方面の連隊の兵士Kは、上等兵から偽装結核の知識を次々と教えられた。中国戦線の華北に駐屯している部隊は戦況次第ではいつ内陸に転戦を命じられるかわからない。早くに除隊して内地…
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シリーズ「日本軍兵士たちの戦場体験」(42)兵役逃れの男たちが密かに実践していた「偽装結核」
第2段階の兵士脱出の方法について、より具体的に語っていこう。これから紹介するケースは、その一部をこの連載でもわずかに触れたことがあるのだが、兵士になることを積極的に拒否したという視点でのエピソードと…
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シリーズ「日本軍兵士たちの戦場体験」(41)東京下町育ちの大工Mが成功した徴兵拒否の方法
徴兵拒否のケースをもう少し語っていこう。 兵隊検査を受ける前の段階(第1段階)で、それを拒むいくつかのケースに触れたのだが、この場合はかなり大胆である。つまり戦争という国策を進める国家に対し…
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シリーズ「日本軍兵士たちの戦場体験」(40)日本政府の上手を行っていたアメリカ側の戦後調査
戸籍抹消をして、兵士になるのを拒否したケースの話を紹介したが、前回まで語ってきたEの例を詳細に調べているうちに、私は戦時の統計や数字にはカラクリがあることがうかがえてきた。戦争というのは国民が多様な…
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シリーズ「日本軍兵士たちの戦場体験」(39)死亡届を偽装したEを翌年に死んだことにした役場の謎
死亡届を投函しても、すぐにはなんの連絡もなかった。しかし1カ月ほどすると、本籍地の役場から死亡届だけではダメなので、埋葬証明書も送るようにと連絡があった。それを見たE夫人は首をかしげたが、Eは「気に…
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シリーズ「日本軍兵士たちの戦場体験」(38)家族を守るために自らの死を装った農村青年
実は50年近くにわたり昭和史の内実を探る中で、本当にこんなことがあるのか、という話をいくつか聞いてきた。兵役逃れの話で言うならば、20歳を過ぎた農村青年が、7、8歳年上の兄が亡くなった時に、自身を死…
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シリーズ「日本軍兵士たちの戦場体験」(37)内臓疾患、失明寸前という状態で兵隊検査に臨んだある国のA
Aの話を続けよう。毎日酒を飲みながら外を走る。むろん内臓に疾患があるがごとき状況をつくるためである。さて検査当日である。むろん同じように酒を飲み、走る。そして検査会場の近くまでも走っていく。着替えて…
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シリーズ「日本軍兵士たちの戦場体験」(36)命懸けで「兵士」を拒んだ男の証言から見える、もう一つの戦場
日本軍兵士の戦場体験を語っていく。私の取材で集めた兵士たちの証言、さらには兵士として従軍した折の体験などさまざまな内容をできるだけ丹念に描写していきたいと思う。 今回から「兵士」になることを…
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シリーズ「日本軍兵士たちの戦場体験」(35)命令を下しただけの上級将校と実際に手を下した兵士たちの戦後
リットン調査団に近づいてくる中国人は殺害せよとの命令をどの程度実行したか否かは不明だが、M自身、その命令をどの程度実行したかについては語らなかった。しかし兵役に就く前に普通の一般商社でビジネスに明け…
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シリーズ「日本軍兵士たちの戦場体験」(34)リットン調査団の護衛と称して関東軍が中国でしていたこと
戦時下の日本軍兵士の現実の姿、あるいは兵士たちが戦後になって証言したその体験、そうしたことをこれから何回か、紹介しておく。兵士というのはむろん戦場で戦わされる存在であり、いわば戦争当事国の青年にとっ…