孫子から学ぶ 子どもの才能をのばす「ほめ方」とタイミング
Googleの「Gemini」、OpenAIの「Sora」、xAIの「Grok」など、2024年に入ってからもAIの発展は止まらない。AIに関わるニュースを見ない日はないが、子育てこそAIに頼っていてはだめだろう。『孫子の兵法から読み解く AIに負けない「すごい知能」の育て方』(発売=講談社)の著者で、学校法人小島学園認定こども園ひよし幼稚園理事長・園長でもある小島宏毅氏が語った。(以下本文より抜粋しています)
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「善く守る者は、九地の地下に蔵かくれ、善く攻むる者は、九天の上に動く。故に能く自ら保ちて全く勝つなり。」
現代語訳:守りの上手な者は、地下に潜むように隠れてじっと機をうかがい、絶妙なタイミングを待っているものであり、攻めの上手な者は、空の上から広く見下ろすように、攻めるポイントが的確に把握できるものである。
育児対訳:見守り上手は、じっと機会をうかがい、子どもが自分から進んでやる絶妙なタイミングを待っているものです。ほめ上手は、子どもを空の上から広く見ているかのように大きな視野で見ているので、子どもがほめてもらいたいポイントが的確にわかります。
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「ほめる」には、「誉める」と「褒める」という二つの漢字があります。「誉める」という字は「光」という字と「言」という字から成るように、つまり「光る言葉」のこと、言葉で相手の顔や態度を光り輝かせることです。一方で「褒める」は、「衣」という字の間に「保」という字が入っています。衣服の間にあって保っているもの、それは何でしょうか。体をまとう衣服のおかげで保っているもの──。そう、体温です。ほめられるとうれしくなり心はうきうきして、体もぽかぽか温かくなり、体温も上がってきますね。
このように「ほめる」とは、言葉で相手を輝かせ、相手の心をうれしく温かくすることであり、子育てにおいては「攻め」の武器となります。ほめられると子どもはうれしくなり、「もっともっと自分の力でやってみたい」「いろんなことにチャレンジしてみたい」と勇気がわいてきます。ほめられれば自信がつき、やる気になっていろいろな力がどんどん伸びていく、という好循環が発生します。ですから「ほめる子育て=攻めの子育て」をして、子どもを伸ばしてほしいと思います。
■重要なのは褒めるタイミングとポイント
では、みなさんはどういう場面で子どもをほめていますか? どういう言葉でほめていますか? ほめるタイミングとポイントは?
おそらく、「上手上手」「すごい」「最高」「チョーうまい」などの言葉でしょうか。ここで考えていただきたいのは、ふだん使っているほめ言葉は、どこに焦点を当てているのか、という点です。おそらく、そんなことを考えたことがないという方がほとんどかもしれません。
■一番わかりやすい褒めるタイミング
ほめるときは子どもの気持ちに寄り添うことが大切なのですが、たいていの場合、そのタイミングを逃がしてしまっています。ほめるタイミングとポイントを的確につかむには、子どもの何を見て、どうしたらいいのか-実は、一番誰にでも簡単でわかりやすい、日常のどこにでもある場面があるのです。それが、「ママ、これ見て!」と、子どもが自分で描いた絵や作ったものを見せにきてくれたときです。
しかし多くのママは、「今は忙しいんだから、あとでね」などと言い、せっかく訪れた絶好のタイミングを自ら手放しています。こういうときこそ、ママも少しだけ余裕を持ち、忙しいなら一呼吸おいてから、次のように尋ねてみてほしいのです。
「へー、何描いたの?(どんなものを作ったの?)」
そして子どもの話に耳を傾ける姿勢をとれば、子どもは自分で描いた絵や工作のことを、得意げに話してくれるはずです。このときがほめるタイミングで、決して逃してはいけません。
タイミングの次に大切なのが、ほめるポイントです。子どもが「これ見て!」と近寄って話してくれたことは、子ども自身がほめてもらいところです。それを汲み取ってあげてください。