「ジジイの文房具」沢野ひとし著

公開日: 更新日:

「ジジイの文房具」沢野ひとし著

 人生の傍らにはいつも文房具があり、それらは宿題や原稿に苦戦する著者を応援し、ときには旅のお供として寄り添ってきた。そんな長年にわたる数々の愛用文房具についてつづったイラスト&エッセー18編と15のコラムを収録。

 筆記具の中でも、鉛筆やボールペンと比べると素直にこちらの思い通りに動いてくれないという万年筆。著者の記念すべき初万年筆はモンブランの「山型リング」で、20歳の頃、京都の丸善でバイト代をはたいて購入したものだった。

 持ち歩き、詩など書き写して文学青年気分に浸っていたが、旅の記念に絵を描こうと三条大橋でモンブランを手にしたとき、なんと、手から滑り落ち鴨川の流れに消えていった--。

 山登りにはコクヨの小型ノートとファーバーカステルのシャープペンがお決まりだが、ヒマラヤでは寒さにやられ、スケッチはまるで幼児が描くつたない絵で、メモは「頭が痛い」「しんどい、もう山にはいかない、疲れた」と泣き言ばかりになった。また、マンスリータイプの手帳には、打ち合わせと称して毎晩飲み歩いていたある夜、妻に「手帳を見せなさい」と詰め寄られて渋々開いた思い出が宿っている。

 鉛筆削りからハサミ、電子辞書に至るまで、お気に入りを選び、使う楽しさが伝わってくる。

(集英社クリエイティブ 1870円)

【連載】木曜日は夜ふかし本

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    TBS「ラヴィット!」の“テコ入れ”に不評の嵐! グダグダぶりを楽しむ独自性損失で視聴者離れ加速危機

  2. 2

    「おい、おまえ、生意気なんだよ」 野村監督は俺の挨拶を“ガン無視”、暴れたろうかと考えた

  3. 3

    「オールスター感謝祭」で“ブチギレ説教” …島崎和歌子は今や「第2の和田アキ子」の域

  4. 4

    NHK朝ドラ「風、薫る」巻き返しを阻む“最大のネック”…見上愛&上坂樹里Wヒロインでも苦戦中

  5. 5

    米国とイランが2週間の停戦合意も日本は存在感ゼロ…お粗末すぎた高市外交を識者「完全失敗」とバッサリ

  1. 6

    スピードスケート引退・高木美帆にオランダが舌なめずり “王国復権の切り札”として白羽の矢

  2. 7

    高市政権が非情の“病人切り捨て”強行で大炎上! 高額療養費見直し「患者の意向に沿う」は真っ赤なウソ

  3. 8

    ブチ切れ高市首相が「誤報だ!」連発 メディア、官邸、自民党内…渡る政界は「敵ばかり」の自業自得

  4. 9

    JFAは森保一氏の“囲い込み”に必死 W杯後の「次の日本代表監督」のウワサが聞こえない謎解き

  5. 10

    『エニイ・タイム・アット・オール』1964年のジョンのギターを聴くだけで元気が出る