エリート街道捨てた立川志の春に聞く「古典落語」の効能

公開日: 更新日:

古典落語の世界を知れば人生は楽になる

 世知辛いご時世を笑い飛ばしたい人が多いのか。落語ブームがじわじわ拡大中だ。古典落語には肩肘張らない生き方の秘訣が詰まっている。その世界観を知れば知るほど、人生は楽になる。米国の名門、エール大を卒業後、三井物産に入社という絵に描いたようなエリート人生を投げ捨て、立川流に入門した気鋭の噺家・立川志の春(40)に、人生の力みが取れるヒントを聞いた。

 ◇  ◇  ◇

 落語のルーツは、お坊さんの説教だとする説があります。退屈なだけの説教を聞く人は少ない。そこで笑いの要素を加え、興味を持ちやすくした。笑いを交えると、情報が頭にスーッと入ってきやすいですよね。だから、落語の演目って何かしらの教訓がある。大した教訓じゃあないんですけど。知ったかぶりはダメ、簡単に金儲けしようとすると、失敗するぞとか。最終目的は笑わせることではないんだと思います。

 落語って最高の失敗談がたくさん詰まった芸能なんです。失敗談だからこそ教訓を得られる。他人の自慢話ほど退屈なものはないですもんね。古典落語の教えに通底するのは「弱さ」と「寛容さ」。人間の「弱さ」には愚かさも、ズルさも、セコさもある。それらを全部受け入れて、逆に完璧じゃないから人間は面白いと認める。

あのバカ」というセリフも、落語の登場人物は決して上から目線で相手をけなそうとはしない。「オレもバカだけどさ」という優しさがありますね。この古典落語が持つ寛容さを、私の大師匠の立川談志は「人間の業の肯定」と表現しました。

 米国で過ごした大学の4年間は真逆でした。自分がバカだと認めてしまうと、全てがオシマイ。とにかく実力主義、個人主義が徹底された社会で、大学にいたエリート層は子供の頃から、論理的思考で相手を説得し、ディベートに勝つことを叩き込まれていた。

 常に「強さ」を競争し、「弱さ」を見せられない。だから、筋トレするやつ、めっちゃ多いですよ。マッチョ願望がすごい。見栄えの「強さ」も追求しているのでしょう。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    3Aでもボロボロ…藤浪晋太郎の活路を開くのは阪神復帰か? 日本ハム、オリックス移籍か

    3Aでもボロボロ…藤浪晋太郎の活路を開くのは阪神復帰か? 日本ハム、オリックス移籍か

  2. 2
    本来は「9月左翼構想」だが…大谷が打てば打つほど手術明けの外野守備は前倒しの気配

    本来は「9月左翼構想」だが…大谷が打てば打つほど手術明けの外野守備は前倒しの気配

  3. 3
    訪日客狙い“奥日光2泊3日400万円ツアー”のアテが外れた理由

    訪日客狙い“奥日光2泊3日400万円ツアー”のアテが外れた理由

  4. 4
    「いまだに、ああいうスタンスは何なのだろうと…」当時の山田GMが首をひねった図太い神経

    「いまだに、ああいうスタンスは何なのだろうと…」当時の山田GMが首をひねった図太い神経

  5. 5
    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  1. 6
    真美子夫人も共同オーナーに? 大谷「25億円別荘購入」の次は女子プロバスケチーム買収か

    真美子夫人も共同オーナーに? 大谷「25億円別荘購入」の次は女子プロバスケチーム買収か

  2. 7
    大谷「DH独占」打ちまくり、週間MVPも…他の野手を休ませられないロバーツ監督のジレンマ

    大谷「DH独占」打ちまくり、週間MVPも…他の野手を休ませられないロバーツ監督のジレンマ

  3. 8
    3人兄妹の末っ子だから年上と遊ぶ機会が多く、彼らと遊ぶだけの体力もあった

    3人兄妹の末っ子だから年上と遊ぶ機会が多く、彼らと遊ぶだけの体力もあった

  4. 9
    東山紀之社長の鉄面皮「SMILE-UP.」の体質は旧態依然…進まぬ被害者補償に批判と失望

    東山紀之社長の鉄面皮「SMILE-UP.」の体質は旧態依然…進まぬ被害者補償に批判と失望

  5. 10
    当時日本ハムGMだった山田正雄氏が「この性格はプロでやる上でプラスになる」と確信した決定的瞬間

    当時日本ハムGMだった山田正雄氏が「この性格はプロでやる上でプラスになる」と確信した決定的瞬間