鹿児島料理の名店も客層が国際的に「外国人も癖のある芋焼酎のお湯割りを飲んでいかれます」

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第34回 鹿児島

 地方都市を歩いていて感じることは路面電車とアーケード街が多いということだ。路面電車もアーケード街も、言ってみれば昭和のものだろう。

 今回訪ねた鹿児島は路面電車がメインストリートを堂々と走り、一番の繁華街である天文館のアーケード街は、シャッター通りとなった東京のそれとは比べものにならないくらい充実している。鹿児島はつまり、昭和的な街といえる。

 その天文館から歩いて10分ほどで島津斉彬を祭る照国神社があり、その先の道沿いには西郷どんの像が立っている。アタシはそれぞれに挨拶し、鹿児島市電に乗って高見馬場へ。天文館通から1駅のところだ。

 平成世代は天文館が遊びの中心だが、アタシの目的は鹿児島郷土料理の名店「おはし」。実はこの店、シニア層に人気のコーラスグループ「フォレスタ」の女性メンバーが一人で行って開拓してきた。昭和世代の常連中心で一見では入りにくい雰囲気だが、どうやらそこの店主である松下さん親子を手なずけてしまったらしい。やるもんだ。

 さて、ここおはしには鹿児島に来たら絶対に食べなければいけないものがすべてそろっていると言っていい。が、ラーメンや軽羹はないから、そこはご了承いただきたい。

 まずは生中(700円)と刺し身の盛り合わせ(1200円~)から。もちろん何を食べてもおいしいのだが、東京ではまず口にできない月日貝がとにかく絶品。甘みを増した小ぶりの平貝と言ったらわかりやすいか。この貝が付近のスーパーで普通に売っているというから驚きだ。

 次は名物自家製イワシのさつま揚げ(300円)と地鶏刺し(700円~)とくれば芋焼酎しかないでしょう。地元の先輩方は夏でもお湯割りが主流。逆らうわけではありませんが、アタシは白金乃露(500円)をロックでいただくことに。酒と肴には間違いなく相性があることを実感する。九州特有の甘めの醤油で食べるからこそ、癖のある芋焼酎が引き立つというもの。こりゃヤバイ。キリがないぜ。

 そこに追い打ちをかけるように、きびなごの塩焼き(750円)が登場。カウンターでは店主の松下良光さんが黙々と料理を作り、息子の努さんが接客を担当。努さんの接客が実に丁寧で親切。かゆいところをかいてくれる。

「最近は外国人のお客さまが増えましたね。さすがに生のイワシや鳥刺しは抵抗があるようですが(笑)」

 なるほど。

「でもほとんどのお客さまが癖のある芋焼酎のお湯割りを飲んでいかれますね」

 仕事の手を止めて努さんが話してくれた。芋のお湯割りがニューヨークやパリのバーに並ぶのも遠くない。「シラナミヲ4.6ノオユワリデ」なんてパリジェンヌがやる日も近いぞ。そんな妄想にふけっていたアタシの前に締めのとろろ飯(700円)がやってきた。これがまた芋焼酎に合うんだよ。そりゃそうだ。種類は違えど同じ芋だもの。合わないわけがない。

 こりゃ、いつまでも締まらないな。二日酔いを覚悟するアタシでした。

(藤井優)

〇小料理おはし 鹿児島市山之口町10-23

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