「ヒポクラテスの悲嘆」中山七里著

公開日: 更新日:

「ヒポクラテスの悲嘆」中山七里著

 埼玉県のとある住宅で、40歳の女性の死体が発見された。駆け付けた県警刑事部捜査1課の古手川和也は、死後3週間経過してミイラ化している死体に対面。

 同居中の両親によると、娘は大学受験の失敗を機に部屋にこもった典型的なひきこもりで、日々部屋の前に食事を置いておく生活だったという。市のセンターや民間の自立支援団体に相談した末に娘と話し合おうと試みたものの、拒絶され食事を拒否されたらしい。

 部屋には飲み物や菓子もあり、絶食の末に亡くなるとは思わなかったという供述に、古手川は違和感を覚え、浦和医大法医学教室の栂野真琴に相談を持ち掛ける。真琴が遺体を検証したところ、口腔内に多くの傷痕を発見。同医学教室の教授で超一流の腕を持つ光崎藤次郎が解剖すると、胃袋から意外なものが発見された。果たして事件の真相は……。

 死体から真相を導き出す法医学ミステリーのヒポクラテスシリーズ第5弾。今回はひきこもりから生じた5つの遺体を巡る物語を、浦和医大法医学教室の精鋭と埼玉県警の古手川チームが解明。今の日本でいつ起きてもおかしくない事件に震撼させられる。

(祥伝社 1870円)

【連載】木曜日は夜ふかし本

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    立花孝志容疑者を"担ぎ出した"とやり玉に…中田敦彦、ホリエモン、太田光のスタンスと逃げ腰に批判殺到

  2. 2

    阪神・佐藤輝明にライバル球団は戦々恐々…甲子園でのGG初受賞にこれだけの価値

  3. 3

    FNS歌謡祭“アイドルフェス化”の是非…FRUITS ZIPPER、CANDY TUNE登場も「特別感」はナゼなくなった?

  4. 4

    阪神異例人事「和田元監督がヘッド就任」の舞台裏…藤川監督はコーチ陣に不満を募らせていた

  5. 5

    新米売れず、ささやかれる年末の米価暴落…コメ卸最大手トップが異例言及の波紋

  1. 6

    兵庫県・斎藤元彦知事らを待ち受ける検察審の壁…嫌疑不十分で不起訴も「一件落着」にはまだ早い

  2. 7

    カズレーザーは埼玉県立熊谷高校、二階堂ふみは都立八潮高校からそれぞれ同志社と慶応に進学

  3. 8

    日本の刑事裁判では被告人の尊厳が守られていない

  4. 9

    1試合で「勝利」と「セーブ」を同時達成 プロ野球でたった1度きり、永遠に破られない怪記録

  5. 10

    加速する「黒字リストラ」…早期・希望退職6年ぶり高水準、人手不足でも関係なし