廃墟化した東京は生き物たちのワンダーランド 「東京幻想 終末散歩」東京幻想著

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「東京幻想 終末散歩」東京幻想著

 東京や大阪などの都市の見慣れた街並みを廃虚化して描く人気クリエーターの最新画集。

 自身が東京のさまざまな街を実際に巡り、スケッチしたアナログの線描をもとに新たな作風で描き出す。

 廃虚といってもその作品は、多くの人がイメージする終末的な世界とは異なり、緑が生い茂り、多くの生き物たちが自由に暮らすユートピアともいえるような世界である。ただそこには人間の姿はない。

 例えば、冒頭を飾る作品は、東京タワーが舞台。赤い躯体は増殖した植物に覆われ、その緑と赤のコントラストが鮮やかだ。人がいたころは立ち入り禁止だったタワーの展望台の屋上は、青空テラスになっており、テーブルが据えられ自動販売機や商店らしきレトロな建物、そして、その隣には大きな果物をたわわに実らす樹木まで生えている。よく見ると背後は森のように緑が濃く、「地面」ではウサギが遊んでいる。

 2階建ての展望台の一部は崩れ落ち、水没した1階部分では魚など水生動物が悠々と泳ぎ、それらを獲物に釣りを楽しんでいる人物がいる。

 どうやらこの人物は、著者自身のようで、この廃虚と化した都市の唯一の生き残りのようだ。

 どの作品にもその姿が描かれ、彼を案内人にして東京のさまざまな街を巡っていく。

 どのようにして人類が滅亡したのかはわからない。しかし、その手掛かりとなるかもしれないヒントが描き込まれた作品が銀座駅だ。

 動かなくなった車両も含めて駅とその上に立つあの有名な時計台のあるビルも廃虚化。そのビルに巻き付くようにティラノサウルスを彷彿とさせる巨大な生き物の白骨体があり、その骨も緑に浸食されようとしている。

 一方、浅草の雷門では風神と雷神が大暴れ。力を競う彼らの起こす風や雨で雷門が徐々に崩れていくさまを描いた作品もあり、暗示的だ。

 砂漠の中のピラミッドを掘り返してみると国会議事堂が現れるという古典SF映画の結末を思い出させるような作品もある。

 上野駅を中心にその周囲の西郷隆盛像や上野東照宮まで描き込んだ大作では、廃虚化した街のあちらこちらでパンダやサイ、キリン、フラミンゴなど、動物園から抜け出したと思われる動物たちが楽しそうに遊んでいる。

 そして、巨大なキノコに覆われた吉祥寺駅は、夜になると発光したキノコに照らされ、怪しく浮かび上がる。

 東京を象徴する建物のひとつ、2本の塔が印象的な東京都庁舎が次第に廃虚化していくさまを屏風風に描いた作品や、横浜駅に巨大タコが絡みついたり、四ツ谷駅におどろおどろしいどくろが現れたりと、葛飾北斎や歌川国芳の浮世絵を彷彿とさせる作品などもあり、これまでの著者の作品とはまた異なる作風も味わえる。

 見慣れた日常の風景が異世界へと変貌し、見る者の心にさまざまな化学変化を起こさせるおすすめ本。

(芸術新聞社 2970円)

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