「Sanctuary 奄美生きものたちの息吹」浜田太著

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「Sanctuary 奄美生きものたちの息吹」浜田太著

 2021年に沖縄島北部および西表島とともに、世界自然遺産に登録された奄美大島と徳之島は、独自の進化を遂げてきた島固有の動植物にあふれた「ホットスポット」。

 本書は、奄美大島生まれの写真家が長年にわたって記録し続けてきた両島の生き物や植物の写真を編んだ作品集だ。

 春の夜明け、森に差し込んだ光が、ヤシの木のように空を目指して高く伸びた常緑木性のシダ「ヒカゲヘゴ」を浮かび上がらせる。地上7~8メートルにもなる直立した茎の先端からは、繊細な葉が放射状に広がり、その葉を通して澄んだ青空が広がる。この冒頭の作品だけでも、この島が特別な場所であることがよくわかる。

 幻の鳥と言われているオオトラツグミが何げなく林道ののり面で営巣していたかと思えば、アカヒゲやリュウキュウキビタキは恋の相手を探しさえずる。そんな鳥たちに始まり、森のシャンデリアの異名を持ち、深い紫色の花がびっしりと巻き付くように木を覆うつる植物「イルカンダ」や、奄美でも限られた場所にしか生息していない卵形の葉の上に花が咲く「アマミナツトウダイ」などの植物、そしてぴょんぴょん跳びはねながらハブから身を守り生きながらえてきたアマミトゲネズミなどの動物まで。まずは春の生き物たちを紹介。

 5月の上旬が過ぎると、奄美は梅雨のシーズンを迎え、南からの湿った風が急峻な東海岸にぶつかり大量の雨を降らせる。

 暑い夏を乗り切る体力をつけるように、この時季、動物も植物もさらに活動が活発になるという。ありえないほど四方八方に枝が伸び、今にも動き出しそうなアコウの巨木、落差181メートルの断崖から海にそそぐ九州最大の「クルキチの滝」、夏の到来を告げる海に落ちる雷の閃光など、島の雄大な自然の景色にもレンズを向ける。

 以降、夏、秋、そして冬へと季節ごとの生き物や植物をとらえた美しい写真が続く。

 中でも圧巻は、アマミノクロウサギの授乳シーンだろう。アマミノクロウサギは、自分の巣穴とは別に子育て用の巣穴を掘り、生まれた直後からその巣穴で子どもたちだけで過ごすといわれていた。

 しかし、その巣穴を見た人は誰もおらず、撮影をあきらめていたが、1996年11月、フィールドワーク中に森の斜面に入り口を塗り固めたような土壁を発見。そこがアマミノクロウサギの子育て用の巣穴だった。

 観察すると、母ウサギは2日に1度やってきて授乳し、子ウサギが巣穴に戻ったのを確認すると入り口を丁寧にふさいだ。天敵のハブから子ウサギを守るための習性だという。

 世界で初めて記録されたこの子育てのシーンも収録されている。

 これまで見たこともない昆虫や花々など、多くの固有種を網羅。「聖域(サンクチュアリ)」と著者が呼ぶ島の自然の豊かさと特別さに圧倒されるが、紹介される動植物のほとんどに絶滅危惧種と注意書きが添えられていることを忘れてはならない。 (小学館 4730円)

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