野地秩嘉
著者のコラム一覧
野地秩嘉ノンフィクション作家

1957年、東京生まれ。早稲田大学商学部卒。出版社勤務などを経てノンフィクション作家に。人物ルポルタージュや食、芸術、文化など幅広い分野で執筆。著書に「サービスの達人たち」「サービスの天才たち」『キャンティ物語』「ビートルズを呼んだ男」などがある。「TOKYOオリンピック物語」でミズノスポーツライター賞優秀賞を受賞。

<第2回>高倉健は中国で愛され尊敬される日本人だった

公開日: 更新日:

【君よ憤怒の河を渉れ (1976年・大映)】

 原作は西村寿行の小説。東映を退社し、フリーになった高倉健の出演第1作だ。無実の罪を着せられた検事が国内を逃亡しながら事件の真実に迫るというもの。北海道で熊と渡り合ったり、なぜかセスナ機を操縦して本州に戻ったりとリアリズムを追求する観客が見たら、「なんだこれは」と思うが、ノンストップアクションの娯楽作として楽しめる。共演している中野良子は美しい。しかも、独特の雰囲気を感じさせる。

 この映画がいま見直されているのは「中国で大ヒットした」からだ。高倉健の訃報が発表された日、中国の外務省、共産党は哀悼の意を表し、メディアは日本の総選挙のことよりも、「高倉健が亡くなった」と大きく報道した。それくらい、彼は中国で愛され、尊敬される日本人なのである。

 本人はこう語った。

「1986年、日中友好協会の招きで、吉永小百合さん、田中邦衛さんと中国を旅しました(略)。飛行機の中で邦ちゃんがこう言ったんです。『健さん、中国へ行ったら大変ですよ。出会う人がみんな〈君よ憤怒の河を渉れ〉の話ばかりする。一説によると、あの映画は10億人が見たらしい。共演していた僕でさえ、空港税関の係員に追い回されたのですから』。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    今オフ勃発「FA捕手大シャッフル」…侍Jの巨人・大城、SB甲斐を筆頭に中日、阪神も参戦か

    今オフ勃発「FA捕手大シャッフル」…侍Jの巨人・大城、SB甲斐を筆頭に中日、阪神も参戦か

  2. 2
    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  3. 3
    国内男子ツアーの惨状招いた「元凶」…虫食い日程、録画放送、低レベルなコース

    国内男子ツアーの惨状招いた「元凶」…虫食い日程、録画放送、低レベルなコース

  4. 4
    3Aでもボロボロ…藤浪晋太郎の活路を開くのは阪神復帰か? 日本ハム、オリックス移籍か

    3Aでもボロボロ…藤浪晋太郎の活路を開くのは阪神復帰か? 日本ハム、オリックス移籍か

  5. 5
    3人兄妹の末っ子だから年上と遊ぶ機会が多く、彼らと遊ぶだけの体力もあった

    3人兄妹の末っ子だから年上と遊ぶ機会が多く、彼らと遊ぶだけの体力もあった

  1. 6
    “辞めジャニ”野村義男は59歳で現役バリバリ!引く手あまたの秘訣は「第三の道」を歩んだこと

    “辞めジャニ”野村義男は59歳で現役バリバリ!引く手あまたの秘訣は「第三の道」を歩んだこと

  2. 7
    巨人・秋広が今季初昇格も阿部監督「全く期待していない」…のんきな性格がアダで早くも背水の陣

    巨人・秋広が今季初昇格も阿部監督「全く期待していない」…のんきな性格がアダで早くも背水の陣

  3. 8
    阪神・岡田監督が密かに温めていた「藤浪獲得プラン」が消滅していた…

    阪神・岡田監督が密かに温めていた「藤浪獲得プラン」が消滅していた…

  4. 9
    当時日本ハムGMだった山田正雄氏が「この性格はプロでやる上でプラスになる」と確信した決定的瞬間

    当時日本ハムGMだった山田正雄氏が「この性格はプロでやる上でプラスになる」と確信した決定的瞬間

  5. 10
    人間性やスタンスが如実に表れたMLB挑戦時の「西海岸かつ小規模都市」へのこだわり

    人間性やスタンスが如実に表れたMLB挑戦時の「西海岸かつ小規模都市」へのこだわり