認知症の症状に配慮し、本人も家族も穏やかに過ごせるよう調整を重ねた
「3年間、本当にありがとうございました。先日、母の告別式を無事に終えることができました。おかげさまで最期まで自宅で見送ることができました。心より感謝申し上げます。どうぞ皆さまにもお伝えください」
これは、先日ご逝去された患者さん(80代後半)のご家族からいただいたお電話です。
この患者さんは、当初は認知症のために通院されていました。しかし、通院が難しくなり介護が必要になった段階で、施設や入院も検討しましたが、愛着のある自宅をついのすみかとしたいという本人の希望もあり、「少しでも落ち着ける環境で」とご家族が判断し、自宅での療養を選ばれました。
在宅医療が扱う患者さんの中には、このように認知症の方も少なくありません。介護を担うご家族と同居している方だけとも限らず、独居の方や中には共に認知症を患うご夫婦の方もいらっしゃいます。
認知症の症状は大きく「中核症状」と「周辺症状」に分けられます。中核症状は、脳の神経細胞の障害によって起こる認知機能障害で、「新しいことを覚えられない」「日付や場所がわからない」「段取りができない」などが典型的な症状です。