怒りっぽく物忘れが目立つ78歳男性…信頼関係の構築から始めた
私たちが訪問診療で伺うのは、ご自宅だけではありません。高齢の患者さんの場合、さまざまな介護施設へ訪問することも少なくありません。たとえば、介護スタッフが24時間常駐する「介護付き有料老人ホーム」、自治体が運営する「特別養護老人ホーム(特養)」、安否確認サービスが付いた「サービス付き高齢者向け住宅」などがあります。施設ごとに受け入れ体制は異なりますが、多くの場合はご自宅とほぼ変わらない形で診察を行うことが可能です。
あるご家族は、都内で働く息子さんが、九州に住む高齢のお父さまを呼び寄せ、都内の介護付き有料老人ホームで支えることを選ばれました。この患者さんは78歳。アルコール多飲が原因で「症候性てんかん」を発症されていました。わずかなきっかけで怒りやすくなる易怒性があり、年齢の影響もあって物忘れが目立つ方でした。そのため、診察の際は患者さんの特性に配慮し、信頼関係を築くことを大切にしていました。
ある日、いつものように訪問すると、患者さんの部屋のドアに鍵がかかっていました。
「何? だれ?」(患者さん)