入院生活で一番つらいのは「食事」…多くの患者がそう答える
もしも人生の最期が近づいたとき、皆さんは「なにを」「誰と」食べたいと思いますか。
訪問診療を受ける多くの患者さんは、「できるだけ自宅で過ごしたい」「入院はつらい」と願い、病院から家に戻ってきます。自宅に戻った患者さんは、衰えていきながらベッドで静かに最期を迎える──。そんなイメージを持たれる方もいるかもしれません。けれど実際には、そうとは限りません。
不思議なことに、念願かなって自宅で療養を始めると、それまで元気を失っていた患者さんが、食欲を取り戻し、みるみる回復に向かうことが少なくないのです。入院中よりも表情が明るく、活力が戻る姿も多く見られます。そんな患者さんに「入院生活で一番つらいことは?」と尋ねると、多くの方が「食事」と答えます。それは「好きなときに食べられない」「味がおいしくない」といった単純な理由だけではありません。食事の“環境”そのものが合わず、ストレスになっていたのです。
病室よりも自宅の方が落ち着けるのは当然のこと。安心できる空間で、好きなものを気兼ねなく口にできることは、大きな楽しみになります。さらに、そばに家族や親しい人がいて、何げない話を交わし、時に笑い合える時間があれば、その喜びは何倍にも膨らみます。