(41)「お父さん、死んでしまったよ」入所の日、母にようやく伝えた

公開日: 更新日:

 熊本に大雨・洪水警報が出されていた日、私は母を病院から迎え出し、入所予定の施設へと送る日を迎えた。

 すでに両親の車をどちらも処分していたため、施設長が迎えの車を厚意で出してくれることになった。病院までは車で30分以上かかる。私が実家にいる頃にも来たことのない、なじみのないエリアなので、もっと遠くまで来たように感じてとても心細かった。

 コロナ禍で県外からの訪問者である私は、建物の中へ入ることが許されず、外で待機した。小さくなった母がゆっくりと、よろけるように歩いてくるのが見えた。

 施設へ向かう前に実家に立ち寄ることを施設長が提案してくれた。1年近い入院生活を終えて初めて戻る自宅。母がもっとも長く過ごしていたリビングへ手を引いて連れていった。一息つき、このタイミングで父の死を伝えた。

「お父さん、お正月明けに死んでしまったよ」

 それまで無言で能面のように表情の変わらなかった母は、一瞬絶句したように見えた。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「おまえになんか、値がつかないよ」編成本部長の捨て台詞でFA宣言を決意した

  2. 2

    これぞ維新クオリティー!「定数削減法案」絶望的で党は“錯乱状態”…チンピラ度も増し増し

  3. 3

    「おこめ券」迫られる軌道修正…自治体首長から強烈批判、鈴木農相の地元山形も「NO」突き付け

  4. 4

    査定担当から浴びせられた辛辣な低評価の数々…球団はオレを必要としているのかと疑念を抱くようになった

  5. 5

    岡山天音「ひらやすみ」ロス続出!もう1人の人気者《樹木希林さん最後の愛弟子》も大ブレーク

  1. 6

    12月でも被害・出没続々…クマが冬眠できない事情と、する必要がなくなった理由

  2. 7

    やはり進次郎氏は「防衛相」不適格…レーダー照射めぐる中国との反論合戦に「プロ意識欠如」と識者バッサリ

  3. 8

    ドジャース佐々木朗希の心の瑕疵…大谷翔平が警鐘「安全に、安全にいってたら伸びるものも伸びない」

  4. 9

    黄川田地方創生相が高市政権の“弱点”に急浮上…予算委でグダグダ答弁連発、突如ニヤつく超KYぶり

  5. 10

    2025年のヒロイン今田美桜&河合優実の「あんぱん」人気コンビに暗雲…来年の活躍危惧の見通しも