デジタル技術の普及で、より臨機応変な診療が実現できる
在宅医療を受けている患者さんは、必ずしもご家族と同居しているとは限りません。
身寄りがなく独り暮らしをしている高齢の方もいれば、近所に住む息子さんや娘さんが週末だけ訪れて一緒に過ごすといったケースもあります。ご家族が毎回往診に同席する場合もあれば、そうでない場合もあります。
ある日のこと、当クリニックで在宅医療を担当している、認知症が進みはじめた独居高齢患者さんについて、その娘さんから相談がありました。
「父が先生から中止してよいと言われた薬ではなく、別の薬をやめてしまったようです。間違いを正すのが難しいのですが、私が同席できないので、LINE通話で診療内容を一緒に聞くことはできませんか?」
確かにLINE通話であれば通話料もかからず、ビデオをつなげば患者さんの様子も把握できます。これまで、診察時の申し送りが医師から患者さん、訪問看護師、そしてご家族へと伝わる過程で「伝言ゲーム」のように情報が正しく伝わらず、現場が混乱することは珍しくありませんでした。その点、この方法なら患者さんだけでなく、同席できないご家族とも直接やりとりできるため、とても有効だと考え、早速導入しました。