(38)「母と娘」という形は、はっきりと失われた

公開日: 更新日:

 母の入所先となる施設を仮申し込みしたことで、病院側でも退院に向けた準備が少しずつ進み始めた。母が状況をどこまで理解できるかはわからなかったが、たとえ形式的でも本人に一度確認しておきたいと考えていた。病院のケースワーカーもそれを後押ししてくれて、Zoomでの面会をすることになった。

 私はいつもの仕事用のPCを立ち上げ、病院とつないだ。しかし母の側の電波状況があまり良くなく、映像は荒れて、顔が途切れ途切れにしか見えなかった。

 懸念材料もあった。母は病院には「退院したら自宅に帰りたい」と話しているという。私は施設入所の予定で準備を進めていたため、その意向とのズレをどうしようかと思案していた。

 画面に映った母の髪は白くのび、手入れされた様子はなかった。入院からすでに7カ月が経過していたが、髪を切るなどのケアは行き届いていないようだった。服装は、入院時に叔母たちが用意した地味な色のパジャマ。鮮やかな色のTシャツにジーンズを合わせ、サングラスをかけて車を運転していた頃の母の姿とはまるで違っていた。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    高市首相、病気を理由に辞任? 囁かれるショートリリーフは麻生指名で「茂木敏充」か

  2. 2

    嵐活動終了で松本潤との「結婚待望論」再燃も…キッパリ否定の井上真央が送る“幸せシングルライフ”と結婚観

  3. 3

    「中傷動画」疑惑で高市首相またブチ切れ答弁連発し逃げ切り画策も…露呈した重大な“落とし穴”

  4. 4

    「笑点」新メンバー春風亭一之輔に“新司会就任”密約説…注目は木久扇、好楽、小遊三の進退

  5. 5

    大谷翔平が負傷して出血…ドジャース指揮官は軽症強調もサイ・ヤング賞に悪影響を及ぼす懸念

  1. 6

    見上愛は桐朋女子中高から日芸演劇学科に進んで演出家を志す 大学同級生・河合優実との本当の関係

  2. 7

    ハリボテの実質賃金「4カ月連続プラス」…巨額の税金つぎ込んだ補助金政策で“ゲタ履き”が実態

  3. 8

    6月7日に「笑点が重大発表」座布団運び山田隆夫は本当に勇退するのか? 「くん」が「さん」に変わった哀愁

  4. 9

    巨人橋上監督代行が坂本勇人に肩入れする事情…出場メンバーとオーダーに“唯一”口を出した

  5. 10

    遠藤航「W杯欠場」の可能性浮上…森保監督が代表引退したはずの吉田麻也を呼び寄せた深謀遠慮