大切な人の旅立ち…あなたならどんな言葉をかけますか?
脳出血の後、アルツハイマー型認知症や1型糖尿病など複数の病気を抱えながら、3年半にわたり在宅療養を続けていた90歳の女性患者さんがいました。
独立して近くに暮らす娘さんと息子さんが、ほぼ毎日交代で介護に通っていました。
ある日、弱っていく母の姿に耐えかねた娘さんが、私に点滴を希望されました。
「静脈点滴をご希望なのは、どんなお気持ちからですか?」(私)
「少しでも長く……」(娘さん)
「血管からの点滴は可能ですが、糖分を含む点滴でも、普通の人の1食分にも満たない栄養しかありません。そのため、状態が持ち直す可能性は低いです。さらにお母さまは糖尿病もあるので、血糖値が大きく変動するリスクもあります」(私)
娘さんの「少しでも長く一緒にいたい」という切実な思いが、ひしひしと伝わってきました。
それでも私は、衰えていく体に点滴を行うことのメリットとデメリットを、言葉を尽くし説明しました。