(45)死への道のりを心地よくする手配しか、私にはできないのだ

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 実家が荒れ果てていくのとは逆に、母の施設での生活は少しずつ安定しつつあった。ケアマネジャーというプロが介護のスケジュールを組み立て、医療やリハビリはそれぞれの専門家が担い、職員が24時間態勢でケアをしてくれる。要介護度に応じて介護保険を使うこともできる。私は母を専門家に任せ、施設に入居するという母自身と私の決断を、心から良かったと思った。

 入居時に母の部屋に設置したスマートスピーカーを通じて、私は東京から様子を見ることができる。呼びかければ、電話のような操作なしにそのまま画像通話が始まり、顔を見ながら話すことも可能なのだ。電話の取り次ぎすらままならなかった入院時とは大違いだ。

 画面越しに母と顔を合わせ声をかけると、私の言うことを理解し、よくしゃべる日もあった。ケアの行き届いた生活を送っているうちに、少しずつ意思疎通をする気力が戻ってきたようだ。

 ただ、レビー小体型認知症の症状のひとつであるパーキンソン症状が少しずつ進行し、次第に歩くことも手を使うこともできなくなった。ついには四肢麻痺の寝たきり状態になり、職員を呼ぶブザーを押すことも不可能になった。

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