(42)実家に戻って初夏の庭先が目に入った瞬間、言葉を失った
母の施設入所に伴い、1カ月ぶりに実家に戻った。初夏の庭先が目に入った瞬間、言葉を失った。庭木は茂り、雑草はのび放題。誰が見ても、人の出入りがない家だとわかるありさまだった。
真冬に父が急死したときは、庭がこれほど荒れるとは想像していなかった。けれど、春から夏にかけて季節が進むにつれ、自然の勢いは急速に増したようだ。これまで、帰省するたびに実家の庭がきれいに整っていたのは、両親の手入れがあったからこそなのだと、ようやくわかった。
鉢植えの木の花を好んでいた母は、サツキや藤、君子蘭などを丹念に育てていた。見事な花を背景に笑顔の写真も残っている。だが、その記憶にある枝は花咲くどころか、すでに枯れ果てていた。
家の中にも、どこかすえたようなにおいが立ち込めている。無人の家が、想像以上の速度で傷みつつあるのがわかる。
まずは近所の迷惑にならないように、シルバー人材センターに庭木の剪定を依頼した。同時に草刈りもお願いしたが、どちらも1~2カ月待ちとのことだった。