「光をえがく人」一色さゆり著
「僕」は「日本一暑い街」にあるミャンマー料理店に通っている。店内に、頭から樹が生えた男が檻(おり)の中にいる絵が飾られていて、待ち時間によく眺めていた。
ある日、ビールを出せとゴネる客に困惑する店主をかばったことから、店主と話をするようになった。次に来店したとき、「あの絵は、誰が描いたんですか」と尋ねると、店主はぽつりと、「友人が監獄で描いたんです」と答えた。店主がヤンゴンの大学に通っていた頃、反政府運動の集会で、演説者が狙撃され、参加した店主も逮捕された。監獄で夜中に目覚めたとき、鉄格子戸が開いていて、同房のHが抜け出したのに気づく。
ほかに、御所人形や水墨画など、アジアのアートにまつわる5つの短編小説。
(講談社 1650円)