「1日1ページ、読むだけで身につく日本の教養365」齋藤孝監修/文響社

公開日: 更新日:

 世界的なベストセラーになったデイヴィッド・S・キダー他著「1日1ページ、読むだけで身につく世界の教養365」(文響社、2018年)にならい、日本に関して編集した優れた作品だ。ミニ百科事典と書評の双方の要素を持っている。

 監修者の齋藤孝氏は<日本の文化や伝統、あるいは自然を総合的にまとめて振り返るという行為は、学生時代を総復習するようなもので、有意義な体験になると思います。日本には素晴らしい自然、技術、文化があふれています。それでは、復習の快感というものを味わってみてください>と「はじめに」で記している。確かに学生時代の総復習に最適の本だ。

 曜日ごとに興味深いカリキュラムが組まれている。

 月曜日――自然(私たちが暮らしている環境と、ともに生きている動植物について)。火曜日――歴史(日本人の起源から、日本が近代化する歩みまで)。水曜日――文学(今も読み継がれる不朽の名作から、和歌や俳句、詩まで)。木曜日――科学・技術(古代の土木技術から、近代のノーベル賞受賞に至るまで)。金曜日――芸術(絵画、建築、彫刻など、世界に誇れる日本の芸術品について)。土曜日――伝統・文化(今も日常に残っている習慣の始まりや、伝統的な風習の数々)。日曜日――哲学・思想(神道と仏教、お寺と神社。日本の神話から哲学まで)

 例えば、科学・技術の「戦闘機・戦艦」という項目にはレーダーに関する興味深い記述がある。

<新兵器であるレーダーの性能を向上させたのは、1920年代に宇田新太郎(1896~1976)と八木秀次(1886~1976)が発明した指向性短波長アンテナ「八木・宇田アンテナ」だった。ただし、その性能の優越性に気づいたのは日本ではなく欧米の軍であった。(中略)/しかし結局、ABCD(アメリカ・イギリス・中国・オランダ)包囲網によって工作機械の輸入が停止されたため精密機械が造れず、整備するための熟練エンジニアの人数も限られた状況で、日本は科学技術戦というべき近代戦争を勝ち抜くことはできなかった>

 優れた技術を活用できなかった日本の政治システムに大きな欠陥があった。 ★★★(選者・佐藤優)

 (2020年10月23日脱稿)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    映画「国宝」ブームに水を差す歌舞伎界の醜聞…人間国宝の孫が“極秘妻”に凄絶DV

  2. 2

    「時代と寝た男」加納典明(22)撮影した女性500人のうち450人と関係を持ったのは本当ですか?「それは…」

  3. 3

    輸入米3万トン前倒し入札にコメ農家から悲鳴…新米の時期とモロかぶり米価下落の恐れ

  4. 4

    くら寿司への迷惑行為 16歳少年の“悪ふざけ”が招くとてつもない代償

  5. 5

    “やらかし俳優”吉沢亮にはやはりプロの底力あり 映画「国宝」の演技一発で挽回

  1. 6

    参院選で公明党候補“全員落選”危機の衝撃!「公明新聞」異例すぎる選挙分析の読み解き方

  2. 7

    「愛子天皇待望論」を引き出す内親王のカリスマ性…皇室史に詳しい宗教学者・島田裕巳氏が分析

  3. 8

    TOKIO解散劇のウラでリーダー城島茂の「キナ臭い話」に再注目も真相は闇の中へ…

  4. 9

    松岡&城島の謝罪で乗り切り? 国分太一コンプラ違反「説明責任」放棄と「核心に触れない」メディアを識者バッサリ

  5. 10

    慶大医学部を辞退して東大理Ⅰに進んだ菊川怜の受け身な半生…高校は国内最難関の桜蔭卒