笠松将、柳楽優弥を超えなければと思っていた。俳優業の“わからなさ”は「自分自身にビビッている感覚」『ガンニバル』シーズン2インタビュー

公開日: 更新日:
コクハク

“この村では、人が喰われているらしい……”
 
 2022年の年末にディズニープラス スターにて独占配信がスタートするや、「面白い!」と一気に注目を集めた柳楽優弥さん主演のサイコスリラー『ガンニバル』。待望の完結編となるシーズン2が先月より配信スタートし、ファンを増やしています。

 村の真相に大悟(柳楽)が迫るなか、秘密を守ろうとする後藤家の当主・後藤恵介としてシーズン1から引き続き物語のキーパーソンを演じる笠松将さん(32)にインタビュー。柳楽さんとの秘話から、俳優業への思いなどを聞きました。

 さらに笠松さんが、本サイト読者にと、自身にまつわる「初恋」エピソードをコクハク?

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『ガンニバル』シーズン2の撮影現場は「全員バキバキ」!?

――シーズン1のラストは「えー!ここで終わるの!」と思わず叫んでしまいました。

 狙い通りのリアクションをありがとうございます。

――(笑)。シーズン2は、1話から後藤家と警官隊との銃撃戦というとんでもないスタートになりました。現場も大変だったのでは。

 全員バキバキですよ。大先輩方も超全力。シーズン1のときから、最初に柳楽優弥さんという俳優が出した基準があって「これを超えないと!」と全員が思っているんです。だから目が死んでる俳優がひとりもいない。そんな現場にいられて、僕はすごく勇気をもらいましたし、めちゃくちゃ楽しかったです。

――演じた後藤恵介について聞かせてください。恵介は後藤家の若き当主ですが、自分は、本当は何をすべきなのか揺れている。かなり複雑な役どころです。

 本当に複雑でしたね。撮影の合間も、本当に思っていることが何なのか、監督やプロデューサーたちと答え合わせしていました。常に矢印を明確にしながら、細かく丁寧に進めていきました。

――しかも途中で、恵介自身が自分の気持ちを「わからない」と口にします。それも正直な気持ちだろうなと。自分がわからない状態にある人物を演じる難しさはありませんでしたか?

 僕自身、結構「わからなさ」の中にあるんです。

「自分は何屋さんなんだろう」と思うときも

――それはどういう……。

 カメラの前でどういればいいのかがわからなくなるという意味ではなく、「俳優としてどう存在しているのがいいことなのか」が、わからなくなる。

 例えばお芝居だけをやって、それで全世界の人たちが注目するような作品を作れるならいいけれど、僕にはそれは難しそうだからバラエティ番組に出させてもらったり、ファッションの世界で感度の高い人たちに注目してもらえるような場所に顔を出して、「『ガンニバル』やってます。こういう俳優です」と売ってみたりする。

 そのときどきで「これが正解だ」と思いながら進みはするんだけど、同時に、「これってどうなんだろう」と迷いもある。「わかんねえよ!」っていう。その感覚を恵介に持ってきたというか、合わせました。キャラクターの感情と自分とのメモリを合わせたみたいな感じです。

――では笠松さん自身の中に、いま現在「わからなさ」の感情がある。

 日に日に濃くなります。「自分は何屋さんなんだろう」とか。自分を正当化して胸を張ってやってますけど、何が正解なのかは正直、わかりません。

「自分はまだ俳優を始めてないくらいの感覚」

――6年ほど前に取材させていただいた際に、いい意味でとても野心的な方だなと感じました。

 そうですね。その通りです。

――ドラマ『君と世界が終わる日に』、連続テレビ小説『らんまん』、ドラマ『TOKYO VICE』、そして『ガンニバル』と、その後の活躍にも納得していました。

 いやいや、全然まだまだです。なんなら自分としてはまだ俳優を始めてないくらいの感じですよ。もっともっとやりたいです。今回の『ガンニバル』で感じたのは、求められて全力で返したら、全力で受け取ってくれるということでした。ただ、そういうチームとできることって、どれくらいあるの? ということも正直、思っちゃうんです。この先、こうした場所がまだたくさんあるのか。それともみんな、そういう場所を求めて戦っているのか。

 そのために全力でやったほうがいいのか。もしくは、いい感じに扱いやすい俳優になったほうがいいのか。挨拶がうまくなればいいのか、芝居がうまくなればいいのか。

――なるほど。

 でも柳楽さんや片山慎三監督を見ていると、芝居なんだろうなと思うんです。現場と向き合って、台本と向き合って。でもやっぱわからなくなりますね。誰に対してじゃなくて、自分自身に怯えてビビっている感じです。

――芝居以外の活動の話もそうですが、いわゆる「売れる」ことも必要だし、と。

 そうです。僕が『ガンニバル』に出るということで、ディズニープラスがパンクするくらいにならないと。で、やっぱり「わからなく」なる(苦笑)。

柳楽優弥には、圧倒的リスペクトを持っている

――あらためて柳楽さんの印象と、エピソードをひとつ教えてもらえますか?

 現場で、誰よりもすごい殺気を放って集中している方です。最初にも触れましたが、「柳楽さんを超えてやる!」とみんなに思わせてくれる。さらに、柳楽さんがそれを「ボケカスが!」(※)と片手ひとつで頭を押さえつけてくる感じ。その攻防の繰り返しでした。圧倒的リスペクトがありますね。

 エピソードで言うと、ほかの作品では分かりませんけど、今回の撮影では、大変なシーンであればあるほど、そのあと「ご飯に行きましょう」とみんなを誘ったり焼肉会を開いてくれました。もちろん強制ではなく。みんなでカラオケに行って柳楽さんと2人で一緒に歌いました。
※シーズン1に登場して話題になった柳楽さん演じる大悟が放ったセリフ

――そうなんですね! 何を歌ったんですか?

 それはちょっと柳楽さんにも聞かないとあれなんで言えませんけど。柳楽さんと肩を組んで歌って、それをみんなが囲んで盛り上げてくれて、嬉しかったし「いい作品になりそうだ」と思いました。

――いい空気が伝わってきます。ちなみに笠松さんはプライベートでは何を歌うんですか?

 カラオケはあんまり。僕、歌はあまりうまくないんで。歌だけうまくないんですよ。それ以外の全ては完ぺきなんですけど、歌だけはね、うまくないんで、人に回しちゃうんです。

笠松将に聞いた2つの「コクハク」

――では最後に本サイトならではの「コクハク」を2つお願いします。後藤家は長く続く大きな屋敷ですが、笠松さん自身はどんな部屋に住んでいますか?

 賃貸なので特別こだわりとかはないし、物もどんどん捨てるので、そんなに多く置いてないんですよ。だから難しいけど、観葉植物が多いかな。

――ちゃんと枯らさず?

 買ってから一度も枯らしたことないですよ。

――そうなんですね。えらい。

 割と好きなほうですね。自然が足りないから置いている感じです。

――もうひとつ。恵介は、ピュアな人物でもあると感じました。好きな女性のことも、心の奥底では大切に思っています。そこから引っ張って、笠松さんの初恋エピソードを「コクハク」してください。

 しょうもない質問ですね(笑)。

――でも笠松さん、なんだかんだで答えてくれそうなので。

 保育園か幼稚園かに行ってたときかな。3歳くらいのとき、僕が誰をとかじゃなくて、そこの先生たち全員が僕のことを好きだったんです。

先生たちの心を奪っちゃっていたエピソード

――え?

 若い先生たちが。だから僕が先生たちの初恋を奪ってました。

――それはどういったところから感じたんですか?

 どう考えても僕のことを好きって感じでしたから。

――(笑)。なぜ先生たちの心を奪っちゃったのでしょう。

 やっぱり手がかかったからじゃないですかね。めちゃくちゃ手のかかる子だったんで。あと、手先が器用で、折り紙とかすごく早くできちゃって、空いた時間に遊びまわっていたらピアノの角に頭を打って結構大きな傷を作っちゃったんですよ。ココ、眉の上に縫い傷が今も残ってるの、分かります?

――たしかに、ありますね。

 そのときの痕なんです。当時の園長先生が、泣きながら若い先生たちを全員ならべてうちの母親に謝ってたんですけど、母親は僕の頭見て、「あんた、なにメロンにかぶせる網みたいなの頭にしてんの!」って言って叩いてきて。その瞬間に、じわっと血の温かさを感じました。

――(苦笑)。

 そのとき、俺、先生たちからの愛をめっちゃ感じて、「初恋、奪っちゃってんなぁ」って思ったんです。そういう子ども時代でした。

六角精児に「今更ながら恐れ多くなっちゃってます」

――ありがとうございました(笑)。楽しかったです。いまも色んな人のハートを奪ってますね。

 いや、今が一番、奪ってないかもしれないです。

――『ガンニバル』の恵介、とてもかっこいいですよ。いくつもありますが、あえて挙げるなら、父親役の六角精児さんとの最後のシーンとか、めちゃくちゃよかったです。

 本当ですか。そう言っていただけると嬉しいですけど。六角さんは、それこそ現場ですごくフレンドリーだったので、作品を観て「すごい俳優さんなんだ!」と今更ながら畏れ多くなっちゃってます。ホントいい作品でみんなスゴイので、これを読まれたみなさんもぜひ。

ドラマ『ガンニバル』シーズン2
ディズニープラス スターで独占配信中
『ガンニバル』シーズン1.1話~3話 は5月12日(月)11:59までYouTubeにて無料配信

(望月ふみ)

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