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スージー鈴木音楽評論家

1966年、大阪府東大阪市生まれ。昭和歌謡から最新ヒット曲まで幅広いジャンルの楽曲を、社会的な視点からも読み解く。主な著者に「中森明菜の音楽1982-1991」「大人のブルーハーツ」「日本ポップス史 1966-2023」など。半自伝的小説「弱い者らが夕暮れて、さらに弱い者たたきよる」も話題に。日刊ゲンダイの好評連載をまとめた「沢田研二の音楽を聴く1980-1985」、最新刊「日本の新しい音楽1975~」は大好評。ラジオDJとしても活躍。

【後藤次利】はどのように『TOKIO』の「超絶編曲」へと行き着いたのか

公開日: 更新日:

 日刊ゲンダイの連載をまとめた『「沢田研二の音楽を聴く1980-1985」』 が、ついに発売されました。何卒よろしくお願いします。

 ◇  ◇  ◇

 さて。まさに「人間交差点」という感じの「沢田研二1980-1985」を通じて、真っ先にブレイクした若き才能が、後藤次利である。何といっても1980年1月1日発売のシングル『TOKIO』のアレンジ兼ベーシストである。あの奇想天外なアレンジとベースプレイで、1980年の日本レコード大賞の編曲賞を獲得するのだ。

 今回は後藤次利という人の沢田研二以前の歩みを、ごくごく簡単にご紹介したい。まずは、連載の中でもご紹介した『チョッパーズ・ブギ』(75年)である。連載にはこう書いた。

 ──ちなみに、昭和世代の知る「チョッパー(ベース)」という言葉。後藤次利がベースを弾いた『チョッパーズ・ブギ』(1975年)という曲が語源なのだ。

 チョッパーベース、チョッパー奏法──ベースギターの弦を右手で引っ張ってバチンバチンと離す弾き方、もしくは右手の親指で弦をバシンバシンと叩く弾き方(と書いても想像しにくいだろうが)である。

 実際に聴いたほうが早かろう。YouTubeの公式動画があったので、これを。



 この曲、そしてサディスティック・ミカバンドのベーシストとして、チョッパーをバチンバチンバシンバシンと決めながら、世に出ることになる。

 そしてベーシストに留まらず、アレンジャーとしても頭角を現す。最初のアレンジ作品は、こちらも連載の中で書いたように、原田真二『シャドー・ボクサー』(77年)。



 しかし、初めてゆえ、編曲作業は混乱を極めたようだ。後藤次利の作品集CD『FITZBEAT YEARS 1983-1985』のリーフレットにあるインタビューで、彼はこう答えている(改行省略)。

 ──当時、「アレンジやらない?」って声を掛けてくれたディレクターさんがいて。そのひとりがフォーライフレコードの池田さん。仕事は原田真二さんの「シャドーボクサー」。まだアレンジを始めたばかりで何もわからない時に「ストリングスを入れて欲しい。」と言われたこともあったな・・・これには困った。速攻でYAMAHAのエレピと、様々な編曲本を買いこんで勉強・・・とは言え、にわかではやっぱりね。

 そして何とか楽譜を完成させるのだが……

 ──現場で20人近いバイオリン、ビオラ、チェロの奏者が僕の譜面を見て鳴らした音は、大不協和音!!! 予定ではきれいに響くはずだったんだけど・・・焦ったね。全員に休憩してもらい、慌ててピアノの前で書き直したよ。

 私が驚くのは、こんな初歩的な苦労をした『シャドー・ボクサー』が1977年12月発売、そして全編アレンジを手掛けた沢田研二のアルバム『TOKIO』が1979年11月発売、シングル『TOKIO』がご存じ1980年元日発売。つまり「大不協和音!!!」から実質たった2年で『TOKIO』に至り、日本レコード大賞編曲賞を獲得するという事実に、である。

 最後に。1980年の後藤次利といえば、沢田研二『TOKIO』と中島みゆき『うらみ・ます』だと思う。このまったく毛色の異なる2曲を、どのような顔でアレンジしたのか。見てみたかった。

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「沢田研二の音楽を聴く1980-1985」(日刊現代・講談社 1980円)

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