キャンディーズの軌跡(前編) 活動わずか5年、伝説の解散コンサート、それぞれの道へ

公開日: 更新日:

 昭和を代表する元祖アイドルグループといえばキャンディーズ。メンバーは伊藤蘭藤村美樹田中好子の3人。1973年にデビューし、78年に解散、その後は三者三様の人生へと場所を移した。彼女たちはどうやって絶頂へ駆けのぼったのか。

 ◇  ◇  ◇

 そもそもキャンディーズの3人は、当時の芸能事務所最大手・渡辺プロダクションがつくったスクールメイツの数十人のメンバーだった。チアリーダーのようにミニスカート姿でポンポンを振りながらアイドル歌手のバックで踊る一員に過ぎなかった。転機は72年、3人が「歌謡グランドショー」(NHK)のマスコットガールに抜擢されたこと。「食べたいほどかわいい」のでキャンディーズと命名された。ラン、スー、ミキの愛称もこの時に決まった。しかし、デビューは未定のまま。

 この3人がグループサウンズのボーカルだった音楽プロデューサーの松崎澄夫氏(その後芸能事務所AMUSE社長)の目に留まる。「僕に担当させてほしい」。松崎氏が手を挙げ、73年「あなたに夢中」でデビューが決まる。

 スーちゃんがセンターを務め、ソロパートを担当したが、4枚目までは話題にならなかった。ところが、ランちゃんをセンターにした75年の「年下の男の子」がオリコンで初のベストテン入りし、一気にブレークする。最大の原動力はランちゃん人気だった。“お姉さん的な愛くるしさを感じる”という中高生の反応に着目して、「年下の男」をターゲットにした戦略が見事に当たったのだ。

♪あいつはあいつは可愛い 年下の男の子~と客席を指す振り付けに身を震わせた若者が多かった。続く翌76年の「春一番」は同3位。それ以降は出す曲、出す曲がヒットの連続だった。

 しかし、彼女たちは歌だけで国民的アイドルになったわけではない。

■ドリフや伊東四朗を相手に笑いのセンスを磨く

 忘れてはいけないのが3人のバラエティー能力の高さだ。当時40%台の視聴率を叩きだしていた「8時だョ!全員集合」(TBS系)のアシスタントとしてドリフとコントを共演し、笑いのセンスを磨いた。

「みごろ!たべごろ!笑いごろ!」(テレビ朝日系)の「悪ガキ一家の鬼かあちゃん」コントでは悪ガキに扮し、電線マンやしらけ鳥のギャグで人気の伊東四朗、小松政夫と互角にやり合った。落ちはミキ、スー、ランの順で、ランちゃんの「私、のー(どう)したらいいの!」は流行語にもなった。

 伊東はのちに「彼女たちは自分で(踊るギャグの)振り付けを考えていた」と語った。男性アイドルでもコントでイジラれることがなかった時代に、アイドル3人はヅラや変装に文句を言わず積極的に挑戦して茶の間の話題をさらった。

 76年にはピンク・レディーが「ペッパー警部」でデビュー。何かと比較されたが、当人たちはライバル視するより同じ時代の戦友という意識だったという。スーちゃんとケイは仲がよかったというし、ピンク・レディーは番組で共演した時はキャンディーズを立てていた。

 社会現象と化したピンク・レディー旋風の真っただ中、77年夏、キャンディーズは突如、解散宣言する。日比谷野外音楽堂のコンサートのエンディング。3人が寄り添い号泣、「私たち、9月で解散します!」と訴えた。ランちゃんが泣きながら発した「普通の女の子に戻りたい」はアイドル史に残る名ゼリフである。

 事前に事務所に了承を得ていない21、22歳のトップアイドルたちの独断による解散宣言はファンのみならず、日本列島に衝撃を与えた。翌日に緊急の記者会見。同日「夜のヒットスタジオ」(フジテレビ系)の生放送でも“陳謝”を口にした。しかし、3人の意志は固く、事務所が説得しても解散は回避できず半年後の解散が決まった。

 シングル「わな」ではランちゃんとスーちゃんの要望でミキちゃんが初めてソロパートをとり、ラストの「微笑がえし」では念願のオリコン1位を獲得。人気が下降してからの解散ではない証しとなった。

 そして、翌78年4月4日、前人未到の後楽園球場での解散コンサートが行われた……。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    福山雅治&稲葉浩志の“新ラブソング”がクリスマス定番曲に殴り込み! 名曲「クリスマス・イブ」などに迫るか

  2. 2

    岡山天音「ひらやすみ」ロス続出!もう1人の人気者《樹木希林さん最後の愛弟子》も大ブレーク

  3. 3

    不慮の事故で四肢が完全麻痺…BARBEE BOYSのKONTAが日刊ゲンダイに語っていた歌、家族、うつ病との闘病

  4. 4

    【原田真二と秋元康】が10歳上の沢田研二に提供した『ノンポリシー』のこと

  5. 5

    国分太一の先行きはさらに険しくなった…「答え合わせ」連呼会見後、STARTO社がTOKIOとの年内契約終了発表

  1. 6

    長嶋茂雄引退の丸1年後、「日本一有名な10文字」が湘南で誕生した

  2. 7

    「べらぼう」大河歴代ワースト2位ほぼ確定も…蔦重演じ切った横浜流星には“その後”というジンクスあり

  3. 8

    100均のブロッコリーキーチャームが完売 「ラウール売れ」の愛らしさと審美眼

  4. 9

    年末年始はウッチャンナンチャンのかつての人気番組が放送…“復活特番”はどんなタイミングで決まるの?

  5. 10

    文春が報じた中居正広「性暴力」の全貌…守秘義務の情報がなぜこうも都合よく漏れるのか?

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「おまえになんか、値がつかないよ」編成本部長の捨て台詞でFA宣言を決意した

  2. 2

    福山雅治&稲葉浩志の“新ラブソング”がクリスマス定番曲に殴り込み! 名曲「クリスマス・イブ」などに迫るか

  3. 3

    年末年始はウッチャンナンチャンのかつての人気番組が放送…“復活特番”はどんなタイミングで決まるの?

  4. 4

    「えげつないことも平気で…」“悪の帝国”ドジャースの驚愕すべき強さの秘密

  5. 5

    やす子の毒舌芸またもや炎上のナゼ…「だからデビューできない」執拗な“イジり”に猪狩蒼弥のファン激怒

  1. 6

    羽鳥慎一アナが「好きな男性アナランキング2025」首位陥落で3位に…1強時代からピークアウトの業界評

  2. 7

    【原田真二と秋元康】が10歳上の沢田研二に提供した『ノンポリシー』のこと

  3. 8

    査定担当から浴びせられた辛辣な低評価の数々…球団はオレを必要としているのかと疑念を抱くようになった

  4. 9

    渡部建「多目的トイレ不倫」謝罪会見から5年でも続く「許してもらえないキャラ」…脱皮のタイミングは佐々木希が握る

  5. 10

    ドジャース佐々木朗希の心の瑕疵…大谷翔平が警鐘「安全に、安全にいってたら伸びるものも伸びない」