碓井広義
著者のコラム一覧
碓井広義メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶應義塾大学助教授などを経て2020年3月まで上智大学文学部新聞学科教授。専門はメディア文化論。著書に「倉本聰の言葉―ドラマの中の名言」、倉本聰との共著「脚本力」ほか。

「忘却のサチコ」の高畑充希は食べる様子がひたすら美しい

公開日: 更新日:

 うまいなあ、高畑充希。あらためてその演技力に感心してしまう。ドラマ24「忘却のサチコ」(テレビ東京系)のヒロイン、佐々木幸子のことだ。

 幸子は出版社の文芸編集部所属。クセの強い作家を担当しても、編集者としての仕事は完璧だ。次は完璧な結婚を目指していたが、なんと結婚式当日に夫となるはずの俊吾(早乙女太一)に逃げられてしまう。

 そんな傷心の幸子を癒やしてくれるのが美食だ。おいしいものを食べてさえいれば、俊吾を忘れられる。そう、忘却のサチコになれるのだ。

 というわけで、このドラマの見どころは一にも二にも幸子の食事シーンである。たとえば、ロシア料理店でのビーフストロガノフ。幸子は心の中で「一口食べるたびに発見がある。まるで味のマトリョーシカ!」と感動する。またジンギスカンの肉をほお張れば、「ありがとう、羊さん! モンゴルの大平原が私を祝福してくれている」と今にも泣き出しそうだ。

 この“心の声”ってスタイル、「孤独のグルメ」を思わせるものの、淡々とした井之頭五郎(松重豊)とはまた異なる味わい。何よりアップで撮られているにもかかわらず、高畑の食べる様子がひたすら美しいのだ。

 しかも、しっかり「おいしそう」に見える。演技を超え、もはやアートの領域。高畑の新たな魅力発見で、忘却どころか目に焼き付きそうだ。

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    日本球界今オフを襲うポスティング地獄…“予備軍”もゴロゴロ、空洞化ますます加速

    日本球界今オフを襲うポスティング地獄…“予備軍”もゴロゴロ、空洞化ますます加速

  2. 2
    佐々木朗希とのただならぬ関係…陰で糸引く「黒幕」は大船渡高時代の韓国遠征まで追いかけた

    佐々木朗希とのただならぬ関係…陰で糸引く「黒幕」は大船渡高時代の韓国遠征まで追いかけた

  3. 3
    ついに国民年金65歳まで納付案が…政府がヒタ隠す「年金積立金250兆円」という都合の悪い真実

    ついに国民年金65歳まで納付案が…政府がヒタ隠す「年金積立金250兆円」という都合の悪い真実

  4. 4
    キムタクを縛り続ける《公称176cm》のデータ…「Believe」番宣行脚でも視聴者の関心は共演者との身長比較

    キムタクを縛り続ける《公称176cm》のデータ…「Believe」番宣行脚でも視聴者の関心は共演者との身長比較

  5. 5
    裏金自民に大逆風! 衆院3補選の「天王山」島根1区で岸田首相の“サクラ”動員演説は大失敗

    裏金自民に大逆風! 衆院3補選の「天王山」島根1区で岸田首相の“サクラ”動員演説は大失敗

  1. 6
    「白鵬の弟子」押し付け合い勃発! あちこちから聞こえる師匠譲りの不穏な評判

    「白鵬の弟子」押し付け合い勃発! あちこちから聞こえる師匠譲りの不穏な評判

  2. 7
    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  3. 8
    キムタク主演ドラマがまさかの1ケタ…“考察”慣れしすぎて王道スポ根が楽しめない?

    キムタク主演ドラマがまさかの1ケタ…“考察”慣れしすぎて王道スポ根が楽しめない?

  4. 9
    全国紙が全国紙でなくなる?「新聞販売店」倒産急増の背景…発行部数の激減、人手不足も一因に

    全国紙が全国紙でなくなる?「新聞販売店」倒産急増の背景…発行部数の激減、人手不足も一因に

  5. 10
    大谷は徹底した個人主義、思考回路も米国人…ゴジラ松井とはメンタリティーに決定的差異

    大谷は徹底した個人主義、思考回路も米国人…ゴジラ松井とはメンタリティーに決定的差異