『あんぱん』RADWIMPSの主題歌は本当に「合っていない」のか? 正統派・朝ドラOPの真逆を貫いた意味

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コクハク

RADWIMPSが歌うOPに賛否

 2025年3月31日より、NHK連続テレビ小説『あんぱん』の放送が開始された。国民的キャラクター「アンパンマン」生みの親であるやなせたかしさん夫妻をモデルとする本作は、初回放送から北村匠海演じる嵩の再現度の高さに期待の声が集まっていた。

 一方で、疑問の声が上がっている点もある。それはRADWIMPSが歌う『あんぱん』主題歌「賜物」についての評判だ。

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 NHK公式サイトにて発表されているRADWIMPSのコメントによると「朝、出たくない布団から這い出す力が湧くような“効き目”があること」「のぶに負けぬ瑞々しい生命力を持った曲であること」「挑戦と冒険をすること」を主眼に作ったという楽曲ではあるが、ネット上の評判は芳しくない。

《物語に全然合わない》
ドラマの雰囲気と違いすぎてキツい》
《『あんぱん』をイメージできるような歌にできなかったのか》
《アンパンマンの作者や絵本のイメージとは全然合わない》

 しかし、RADWIMPSといえば、過去には大ヒットアニメ映画『君の名は。』や『天気の子』などの音楽を担当し、作品に対する理解度の高さを絶賛されていたことも。そのため、良く知るファンのなかには「あえてこのような楽曲にしたのではないか」と推測する人もいる。

 そこで、カルチャーに精通する音楽ライターの曽我美なつめさんに意見を聞いた。

アップテンポかつマイナー調の曲は受け入れられにくい?

――RADWIMPSが歌うOPを聞いてみていかがでしたか?

 まずは朝ドラ主題歌にしては元気でアッパーだけどRADWIMPSらしさは全開の曲、だと思いました。「賜物」は『おむすび』でのB'z「イルミネーション」や『虎に翼』での米津玄師「さよーならまたいつか!」、『らんまん』のあいみょん「愛の花」など、近年の歴代朝ドラ曲と比較すると確かにテンポも早く、なによりマイナーコード的な曲調も印象的です。

 朝ドラ主題歌の代表的なイメージたる、ミドルテンポな「慌ただしい朝を優しく包み込み、爽やかに寄り添う曲」というより「今日も大変なことがいっぱいだけど朝から元気出して乗り越えていこうぜ!」という雰囲気を感じます。

 そのため前者の印象に慣れている人々から「朝ドラに合わない」という意見が頻出しているのではないでしょうか。

「ヒーロー物へのアンチテーゼ」だったアンパンマン

ーー確かに…。そんな「朝ドラと合わない」という意見についてどう思いますか?

 私個人としては、合わないとはあまり思いません。今回は近年の朝ドラの中でも、人々をにぎやかに楽しませ元気づけるマンガ・アニメといったエンタメコンテンツに非常に近い人(やなせたかし夫妻)の物語になるはずなので、優しさや爽やかさより、明るさやエネルギッシュなポップさが曲調に現れるのは1つの物語解釈として全然アリ。

 加えてそもそもアンパンマンは、やなせ先生の戦争従軍体験・生きる意味を問う人生哲学というかなり重い主題が誕生背景で、当初はヒーロー物へのアンチテーゼとして生まれた作品です。優しいが強くはない、自己犠牲のヒーローでした。そのため従来の朝ドラ主題歌の真逆を行く、マイナス感情を誘発する曲調かつマイナー調のアッパーな曲という整合性も取れていると感じます。

 おそらく『あんぱん』と合わないというより、多くの人が持つアンパンマンのイメージと合わないという感情に近いのではないでしょうか。また、物語の重要なモチーフが従来の朝ドラに比べ、大勢の人々に知れ渡っているからこそ起きている齟齬な気も…。


強烈な妻と優しい夫の2面性を表す楽曲

ーー登場人物との親和性についてはいかがでしょうか。

 同時に今回の主人公・浅田のぶは、おそらく通常の朝ドラ女性主人公に比べかなりエネルギッシュかつアグレッシブな女性になるはずです。なぜなら主人公のモデル・小松暢は、地方紙の初女性記者になったいわゆる当時のバリキャリ&亭主関白の色濃い時代で夫・やなせに「(漫画家としての)収入がなければ私が働いて食べさせてやる」と言い放つ肝の太い女性。

 余談ですが、高知県の勝気な女性を示す”はちきん”はそもそも「8つ金玉があるほどの男勝りさ・豪快さ」が語源です。そのためむしろ楽曲に対しては、彼女の強烈な個性たる闊達さと女性の普遍的なしなやかさ、あるいは妻・のぶの活発さと夫・嵩の優しさ。2つの物語の側面をとても上手に落とし込んだな、と感じました。

ーー批判がある一方で、「かっこいい」「最高だった」「RADらしい」というコメントも見かけます。

 似たようなテイストのRADWIMPS従来曲であれば、マイナーコード的な曲調は直近の配信曲「大団円」「KANASHIBARI」のニュアンスも汲んでいるし、近年の映画関連曲「愛にできることはまだあるかい」「すずめ」のような壮大さも曲の聴き所であるサビにはしっかり入っています。

 また一聴しただけでは確かにやや聴き取りにくい、言葉遊びのようなフレーズやオクターブの音域を使う歌のメロディもバンド最初の人気絶頂期となるメジャーデビュー直後、00年代後半からすでに頻出していた曲表現の印象。

 なので、繰り返しになりますが「賜物」は端的に言うと、典型的かつ多角的なRADWIMPSらしさ全開の曲だと思います。

視聴率同様に評価も上がっていくか

 初回放送の視聴率は『おむすび』を下回っていたものの、徐々に上昇。第1週第4回は番組最高の15.5%を記録するなど盛り上がりをみせている『あんぱん』。RADWIMPSの主題歌に対する評価も変化していくか。

(編集MS/コクハク編集部)

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