<第3回>クロは「この新幹線、脱線しないですかね」と呟いた
あの日は、朝から激しい雨が降っていました。空は灰色というか鈍色です。
97年8月、私とクロ(黒田博樹)は名古屋から帰広するため、新幹線に乗り込みました。
新人だったクロはローテ投手として前日、中日戦に先発しました。しかし、5回もたずにKOされてしまいました。私もクロが先発した前日に先発し、八回途中で失点を重ねて降板。シーズン中盤の勝負どころで、揃って勝ち投手になれませんでした。
天気と同じく、どんよりした気持ちで隣り合わせで座りました。列車が出発してしばらくするとクロは、「つらいっすわ」とうなだれると、神妙な表情をしながら「この新幹線、脱線しないですかね」とボソッとつぶやいたのです。
今でこそ日米通算200勝を達成した大投手ですが、このときは3戦連続で負けが続いていました。開幕前の二軍のオープン戦では、1回10失点を喫したこともありました。打たれるつらさを痛感すると同時に、自分に対するふがいない気持ちが口をついたのでしょう。
その後、カープでエースとなり、メジャーでも活躍したクロは、「一球の重み」を大事にしています。ルーキーの頃から、この一試合、この一球に対する思いは強かったように感じます。


















