「上海物語 あるいはゾルゲ少年探偵団」小中陽太郎著
1940年4月、6歳の須磨雄は母の明石子に連れられ、銀行員の父の赴任先・上海に向かうために太洋丸に乗り込む。翌朝、船長が食堂に乗客全員を呼集。須磨雄母子が皆に遅れて食堂に行くと、男たちに取り囲まれ、国民服姿の男に尋問される。
男は母子に一枚の紙切れを突き付ける。男はその紙片を外国のスパイによって描かれた地図と疑っていたが、須磨雄が自分が描いたものだと主張し、許される。男は陸軍少佐の本郷義昭と名乗る。上海に到着すると、母はホテルのロビーで例のスケッチを女に手渡した。須磨雄はさらに女がその紙を白人に渡すのを見逃さなかった……。
自らの上海体験をもとに、史実と虚構が入り交じりながら描かれるハイパースパイ小説。(未知谷 2500円+税)